もう10年以上も前になる。
『WiLL』誌上で、西尾幹二氏による天皇・皇后両陛下
(当時は皇太子・同妃)への常軌を逸したバッシングが、
執拗に続けられた(当時の同誌編集長は花田紀凱氏)。
それには後日談がある。同連載を視聴率が稼げるネタと判断したのか、
テレビ朝日の「朝まで生テレビ」がテーマに取り上げた。
私にも出演依頼があったものの、この時ほど迷ったのは珍しい。
出れば、西尾氏と真正面からぶつかるのは、避けられない。
しかも失礼ながら、もし他の出演者が同氏を批判しようとしても、
十分に粉砕する迫力に欠けるのではあるまいか
(同氏への賛同者すら少なくない可能性もある)。その点、他ならぬ皇室がテーマであり、皇室の尊厳を
お守りしなければならないのであれば、私は情け容赦なく
“撃滅”するだろう。
現に、同氏の皇室攻撃はどうしても撃滅する必要があった。
従って、公的には是非とも私が出演すべきことは明らかだった。
しかし当時の私は、個人的に同氏とそれなりに接点があった。
だから私情においては、そのような激突は極力、避けたいのが
偽らざる気持ちだった。
誰かが、同氏の暴論を見事、木っ端微塵にしてくれるなら、
私が敢えて出るには及ばない。
そういう思いも強かった。
だが、それは叶わぬ願いだろうと考え、私的な感情は捨てて、
出演を決意した経緯がある。番組では、手前味噌ながら一応、私が果たすべき役割は
果たせたように思う。
一旦、決断した以上、ためらいは一切なかった。
それよりも、番組中、同氏がこんな放言をしたのが、忘れられない。「雅子妃(皇后陛下)は来年の今頃には全快しています!」と。
出演者は皆、驚いた。
司会の田原総一朗氏が当然、問い質した。
「どうしてそう言い切れるのか?」と。
その時、同氏は平然とこう言ってのけた。
「だって仮病だから!!」。
この瞬間、同氏がそれまで言論人として築き上げて来た信頼感は、
立ち所に失われた、と言っても、恐らく言い過ぎではあるまい。
この予言(?)は勿論、外れたし、外れたことに対して、
同氏が謝罪したとか、弁明したという話を(少なくとも私は)
聞かない。周知の通り、皇后陛下は今もご療養を続けておられる。
この事実を、同氏はどう受け止めるのか。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
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