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高森明勅
2021.2.27 06:00皇統問題

旧宮家への意向確認「考えず」

2月26日の衆院予算委員会分科会で加藤勝信内閣官房長官は、
皇位の安定継承を巡り、「男系」維持を唱える人々が
拘(こだわ)っている旧宮家系男性に新たな皇籍取得を
可能にする方策について、当事者への意向確認は
「現時点で考えていない」と答弁した
(産経新聞、同日13時28分配信、共同通信、13時30分配信)。

実は、令和2年2月10日の衆院予算委員会でも、
当時の菅義偉官房長官が、当事者への意向確認は今後も「考えていない」旨の
答弁を行っていた。
対象となる人々は皆さん、言う迄もなく国民だ。
当然、強制はあり得ない。
ご本人の同意が最低限のスタートラインになる。
にも拘(かかわ)らず、意向確認を考えていないということは、
政府が「現時点」では、旧宮家案を具体的な選択肢に含めていない、
と述べたに等しい。
例の「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重み“など”を
踏まえ“ながら”、“慎重かつ丁寧”に検討を行う必要がある」という、
目眩(くら)まし効果抜群の霞ヶ関文学(官僚作文術)の最高傑作的文言は、
今回も活用された。

しかし、その重みなどを踏まえながら、慎重かつ丁寧に検討を行った結果、
非嫡出の継承可能性が無い等の条件下では、「女性・女系」を認めることが
不可欠、というのが小泉純一郎内閣の時の有識者会議報告書のロジック
だった。

だから、今回の答弁で注意すべきは、「現時点で」という限定を
どう評価するかだろう。
菅答弁では、「今後も考えていない」という趣旨だったのに対し、
現時点では考えていなくても、今後は分からない
(選択肢に加えるかも知れない)、という含みを感じさせる
言い回しになっている。

旧宮家案の現実的な困難さを政府は深く理解しているはずだが…。
さすがに、菅答弁の真意に気付いた男系維持論者の反発を、
少しでも弱める配慮をしたのか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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