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高森明勅
2021.1.30 06:00その他ニュース

ルソーの「女性」観

フランス革命に大きな影響を与えたジャン=ジャック・ルソー。
政治社会における人間の自由と平等を訴えた。
しかし、その「女性」観については、以下のような指摘がある。

「メアリ・ウィルストンクラフトは『女性の権利の擁護』において、
(ルソーの代表的著述の1つ)『エミール』を取り上げ、
ルソーの女性観を手厳しく攻撃した。

実際『1人の男性、あるいは人々の判断に服従すること』を
女性の運命とし、『不正にすら耐え、夫の過ちをも不平を
言わず忍ぶ』ことを早くから(女性に)教えようとする
ルソーがまず女性解放論者の槍玉に挙げられたのには、理由がある」

「性差別については(同じくルソーの代表作の1つ)
『人間不平等起源論』
の文明批判の視点はほとんど働いていないのである。
…両性の身体構造の差の精神への影響について…その原則は
『一方(男性)は能動的で強く、他方(女性)は受動的で
弱くなければならない』という命題である。
したがって、女性は依存する存在であり、夫をもたないときも
世論に依存するから、生涯従順でなければならない」

「女性の依存は、信仰においてさえ、自ら判定する自由を奪う。
娘は母の、妻は夫の宗教を奉じなければならない」(福田歓一氏)

18世紀末のフランス革命で普通選挙が実現しても、
参政権を持つのは男性に限られた。
欧米で女性にも参政権が認められるようになるのは、
主に20世紀に入ってから。
フランスで、参政権が女性に拡大するのは、1945年まで遅れた。

ちなみに日本では、明治13年(1880年)の地方議員(区町村会)の選挙で、
初めて女性も投票できるようになった。
これは、“戸主(こしゅ=家族を扶養する義務を負う一家の長)”なら
男女に関係なく投票を認めたもので(女性の戸主もいた)、
「民権ばあさん」と呼ばれた高知の楠瀬喜多(くすのせ・きた)の奮闘による。

楠瀬は江戸時代、天保7年(1836年)の生まれ。
世界の女性参政権拡大の趨勢(すうせい)に照らして、
先駆的な出来事だった。
江戸時代の平等的女性観が、差別的女性観に立脚した
近代ヨーロッパを“追い越した”事例、と言えるかも知れない。
しかし、後に否定され(明治17年=1884年)、結局、
わが国で男女平等な参政権が実現したのは、フランスと
同年(昭和20年)だった。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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