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高森明勅
2021.1.26 06:00その他ニュース

近代思想家の差別的「女性」観

イギリス名誉革命の中心的論者だったジョン・ロック。
その社会契約や抵抗権についての考え方は、アメリカ独立宣言や
フランス人権宣言に、大きな影響を与えたとされる。
しかし、その「女性」観はどうだったか。

以下のような指摘がある。

「ロックは、家族は男性と女性が結婚を契約することにより
始まると論じます。
しかしその関係については、女性が男性に従属するのは
当たり前のことだと論じました」

「ロックは熱心なプロテスタントでしたから、
女性は男性に支配されるべきだという『聖書』に
書かれた神の命令は、当然受け入れるべきだったのです。
つまり自由で平等な人間が社会契約によって国家を作る前の
『自然状態』において、家族を作るために女性を抑圧する
結婚契約が結ばれていたというのが、ロックの描いた家族と
国家の構図でした」

「ロックが『社会契約』による国家の設立を論じる時、
そこには女性についての論及がありません。
この時ロックが契約を結ぶ主体として考える自由で平等な
『人間(Men)』とは、男性だけを意味すると考えるべき
でしょう。

なぜ男性に限られると理解できるかといえば、
契約を結ぶのは理性と財産を持っている『人間』だと
されているからです。

(ヨーロッパにおいて)理性はアリストテレスの昔から
男性だけが持つ属性でした。
またロックの議論において、財産は人間が労働することによって
獲得するとされていましたが、神から労働を命じられたのは
男性でした。
ですから財産を獲得できるのは男性だけだということになります」

「ロックによって、ペイトマンの分類における『近代的家父長制』
の考え方が提示されたのです。
こうして女性は家族に閉じ込められ、公的領域から締め出される
状況が作られていくことになりました。
これが近代社会における男女関係の構造を形作っていきます」

「近代社会における家族と国家の分離と、家族における女性差別の
構造が…現実化するのは…18世紀の産業革命を経た後ですが、
現在の社会を見ると、ロックの主張した構造があまりにも
忠実に実現されているのに驚くばかりです」(中村敏子氏)

近代社会は、それまでの抑圧的な旧秩序を打破して、
「人間」に自由と平等をもたらした―と語られてきた。
しかし、その「人間」とは(“欧米圏の人々”に限定されて
いただけでなく)、もっぱら「男性」を意味していたようだ。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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