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高森明勅
2020.12.24 06:00皇室

上皇陛下のご近況

12月23日、上皇陛下の87歳のお誕生日当日、宮内庁上皇職が
陛下のご近況についての一文を公表した。
謹んでその一部をご紹介する。

「仙洞仮御所(せんとうかりこしょ)でのご生活は、
新型コロナウイルスの蔓延により、当初の想定から一変しました。
陛下は、上皇后さまと共に、新型コロナウイルスの感染が国内外で拡大し、
人々の健康と日常生活に大きな影響を及ぼしていることを深く案じられ、
この感染症への理解と感染防止のための医学的、社会的な取組みに
関心を向けてこられました」

「陛下は早くより沖縄の人々の苦難の歴史を深く心にされ、昭和の時代から、
当時まだビザを持って本土を訪れる沖縄の『豆記者』や伝統文化の継承者を
御所にお招きになり、沖縄の詩歌を研究してご自身でも琉歌(りゅうか)を
お詠(よ)みになるなど、その文化の理解と継承を大切にしてこられました。
沖縄に寄せる思いは今も変わるところがなく、首里城の焼失を悲しまれ、
首里城の歴史を紹介する長いテレビ番組を上皇后さまと共に何回かに
分けてご覧になり、その再建が着実に進むことを願われています」

「再び急増する新型コロナウイルスにより、国民生活が一層厳しく、
困難な状況になっていることから、今年は記帳を含めすべてのお誕生日行事を
お取り止めになり、恒例の御祝御膳(おいわいごぜん)もお控えになります」

「ご即位前から大切にしてこられた沖縄県慰霊の日、広島・長崎原爆の日、
終戦記念日並びに阪神淡路大震災及び東日本大震災の発生日には、上皇后さまと
共にご黙祷になりました。
また、宮中祭祀が行われる時間は、いつもお慎みでいらっしゃいます」

「東日本大震災で全村避難となった福島県飯舘村村長退任報道の折には、
同村をお見舞いになった当時を振り返られながら、被災地のその後の様子を
案じていらっしゃいました。
これまでにお訪ねになった国や地域、お繋(つな)がりのある人が新聞や
テレビで報じられると、いつもその時のご訪問やお会いになった人のことを
上皇后さまにお確かめになったり、記録をお取り寄せになったりして、
当時の状況や人々の苦楽を思い起こされ、静かに社会の安寧と人々の幸せを
願っていらっしゃるご様子です」

「体調については、幸いなことに特段の問題はありませんが、
お年を召され、上皇后さまにいろいろとお尋ねになることが多くなられた
ようにお見受けします。
何度か繰り返されるご質問にもその都度(つど)丁寧にお答えになる
上皇后さまと、それを聞かれご納得になるといつも明るい笑顔におなりになる陛下。
時に勘違いや戸惑いがあっても、一緒にお笑いになりながら、ご記憶を新たにされ、
日々のご生活を確かなものとされています」

「陛下には、昨年から始まった一連の御代替(みよがわ)りの行事を
上皇后さまと共にすべて静かに見守ってこられましたが、
先般の立皇嗣の礼をもって、全ての即位行事がつつがなく終了したことに
深くご安堵(あんど)のご様子でいらっしゃいました」

あわせて、今回ご公表になった上皇后陛下とご一緒の静かな動画を拝見すると、
つい涙ぐみそうになる。

なお、お側近くでお仕えする上皇職の文章でも「上皇后“さま”」
となっていることから考えて、この敬称の遣(つか)い方には、或いは
(万事にお控えめでいらっしゃる)上皇后陛下ご自身のお考えが
反映されているのかも知れない。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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