毎日新聞(9月28日、21時37分配信)に以下のような記事。
「新型コロナウイルスの感染拡大に伴って延期していた
秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)となられたことを
国内外に宣言する『立皇嗣(りっこうし)の礼』について、
政府は11月中旬を軸に実施する調整に入った。
近く皇位継承に関する式典委員会を開き、感染状況を見極めた上で判断する。政府は代替わりの一連の儀式が全て終われば、
安定的な皇位継承を巡る検討に着手する。
…ただし、(立皇嗣の礼は)感染防止対策として、賓客らを招く
『宮中饗宴(きょうえん)の儀』は行わず、招待客も絞る方針。
準備に1~1カ月半程度かかるため、政府は早期に日程を決めたい考え」と。当初は4月に予定されていた。
それがここまで延期されてしまった。
だが、「立皇嗣の礼」は元々、前代未聞の儀式。
“(皇太子や皇太孫でない)皇嗣”は、次の天皇であるべきことが
必ずしも確定したお立場ではない。
皇室典範では、制度上、皇籍離脱の可能性さえも百パーセントは
排除されていない(11条2項)。皇太子や皇太孫とはお立場が全く異なる。
今の時点で皇位の継承順位が1位というに過ぎない
(敢えて論理的可能性として指摘すれば、今の制度のままでも、
天皇・皇后両陛下の間に男子がお生まれになられたら、
その瞬間に継承順位は2位に変更される)。だから、皇太子の為の「立太子(りったいし)の礼」の場合は前例も、
挙行すべき理由もある一方、「立皇嗣の礼」については、
前例が無いだけでなく、前例が無かった“しかるべき”理由もある
(皇太子や皇太孫ではない皇嗣の前例に、昭和天皇の弟宮だった
秩父宮のケースがあり、勿論、そのような儀式は無かった)。しかも、天皇のご即位に伴う「一連の儀式」とすべき性格のものでもない
(旧皇室典範下の制度では、ご即位関連の儀式が旧
「登極令〔とうきょくれい〕」に一括されていたのに対し、
立太子の礼は旧「立儲令〔りっちょれい〕」で規定)。だから、「安定的な皇位継承を巡る検討」をその先まで延期する根拠は、
どこにも無かった(むしろ議論に余計なバイアスが掛かりかねない)。
それでも、ご譲位を可能にした特例法の附帯決議で、国会の意思として
求められていた皇位の安定継承を巡る検討が、
ようやく本格化するらしいのは、歓迎できる。関連の報道として、次のような記事もあった。
「安倍(晋三)氏が去った後の政府・与党の中枢には、
男系継承に理解があるとは言い切れない重鎮もいる。
菅(すが)政権誕生の立役者となった自民党の二階俊博幹事長は、
過去に女性天皇と女系天皇に関して『男女平等、民主主義の社会なので、
それを念頭に入れて問題を考えていけば、おのずから結論は
出るだろうと思っている』と語った。首相に近いとされる河野太郎行政改革担当相も、
男系継承が『一番望ましい』としながらも、
『次の世代は(秋篠宮ご夫妻の長男の)悠仁さましか
いらっしゃらないので、男系を維持していくのはかなりリスクがある』
と述べている。男系を維持するため、戦後に皇籍を離脱した旧宮家の人々の
復帰について『グロテスクだ』と露骨に嫌悪感を示す政府高官までいる」
(産経新聞9月24日付)この記事によれば、政府内に旧宮家案を「グロテスク」と
感じている“高官”がいるらしい。
それは恐らく、彼1人だけの捉え方ではあるまい。
旧宮家系国民男性の皇籍取得について、(必要不可欠なはずの)
本人達の意向確認はしない、という政府の姿勢
(2月10日、衆院予算委員会での菅内閣官房長官〔当時〕の答弁)
の背景が理解できる。さて、どのような検討が進められるか。
この問題ほど、国家にとって最重要で、結論が既に明らかになっており、
国民の多数もそれを支持していて、時間的に差し迫っているにも拘らず、
政府の臆病さと、国会の無関心によって、その解決がいたずらに
先延ばしされて来たテーマは、他にないだろう。しかし、ようやく動き始めていた政府の取り組みを、
無責任にも「白紙」に戻した(その上で長い在任期間中ひたすら無為を決め込んだ)
安倍氏は、もう政権を去った。
菅首相のリーダーシップに期待したい。【高森明勅公式サイト】
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