わが“戦友”倉持麟太郎弁護士。
この度、初めて単独の著書を刊行された。
それが『リベラルの敵はリベラルにあり』(ちくま新書)。
先日、ご恵送戴いた。つい、リベラリズム研究の権威、井上達夫氏の著書のタイトルを
連想してしまう。リベラルな価値の普遍性を確信するが故に、
リベラル勢力の情けない現状に、“理性的な”苛立(いらだ)ちを
抑えられない。
そんな気分がうまく表現されている。「政治を乗りこなす」為の多様な論点を、コンパクトに詰め込んだ本書は、
前半(1~4章)が理論編、後半(5~6章)が実践編という構成だ。
この両者を、“共に”高いレベルでカバーできるところに、倉持氏の稀有
(けう)な才能を認めることができる。
理論家は、しばしば自分が築き上げた観念の城(本書の表現では
「理論の空中楼閣」)に閉じ籠もりがち。一方、いわゆる実践家は、驚くほど理論的な見通しを欠落させて、
平気だったりする。
本書は、バリバリの実践家による、現代日本の政治に対する、
明快かつ鋭利な理論的批判(本人のブログに時折見られた難解さは
すっかり影を潜めている!)。
そこに斬新な魅力がある。保守・リベラルという立場の違いを超えて、政治の「再生」を願う全ての
人々にとって、恐らく必読の1冊になるのではないか。
本書中には、上皇陛下のご譲位を可能にした法整備を巡る動きについても、
取り上げられている。
その取り組みに、直接関与した人物による簡潔な要約として、興味深い。「小林よしのり氏主催の『ゴー宣道場』からの誘いを受け議論に
参加することとなった…。
その場では、皇室研究家の高森明勅氏を中心に、譲位制度についての
極めて高度かつ現実的な解決策が議論されていた。
同時に私は、『このまま議論だけしていても実現しない。
でも条文化して世に問えば、実現の芽は出てくる』と確信した。…具体的行動に結び付けることなしに政治は動かない。
私はすぐに高森氏にけしかけて、皇室典範改正案の要綱を出してもらい、
議論しながら条文案として仕上げていった。
この提案を、当時民進党の野田佳彦議員や馬淵澄夫議員、山尾志桜里議員に
見てもらったところ、すぐさま問題意識を共有して動いてくれる運びと
なった。結果、政府の有識者会議よりも先んじて、同年12月21日、民進党の
『中間論点整理』が発表され、『譲位を恒常的に制度化する皇室典範改正』
という方向性が大きく報道され、天皇の公務軽減でお茶を濁すという政府の
既定路線は変更を迫られることになる。
最終的に成立した改正法は、残念ながら特例法にとどまったものの、
それでも譲位が可能になり、高森氏が示した譲位に欠かせない三つの要件は
ほぼそのまま特例法に組み込まれた。
森友・加計学園問題が発覚する前の安倍一強全盛期において、
皇位をめぐる極めて重要な法案で、野党側から議論をリードし成果を
得たのである。衆議院法制局のサポートも得つつ、野党側から、国民の気持ちに沿う
建設的な提案を提示したからこその成果であったと思う」―少し“しょった”言い方になるが、あの時に、倉持氏と私の出会いが無ければ、
事態の展開は違っていた可能性があるのではないか、とも思う。
「けしかけて」くれた同氏に感謝。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
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