台湾の政府(経済部)系シンクタンクの顧問を務めておられた
藤重太氏から新刊の『国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦』
(産経新聞出版)を贈呈して戴いた。台湾が今、国際社会で「新型コロナ対策の優等生」と見られていることは、
よく知られているだろう。しかし、その「対策」の詳しい実態はどうなのか?
私もかねて気になっていた。
その疑問に、台湾大学を卒業され、台湾に深い知見と幅広い人脈をお持ち
(台湾歴34年!)の、藤氏という最も適任な方が、真正面から答えているのが、
本書。台湾が大好きで、中国は大嫌い。
という、ご自身のお気持ちをなるべく抑えて、適切な距離感で書こうと
努められている姿勢に、好感が持てる。
それが、記述に説得力を増す結果にもなっている。
更に勿論、台湾以上に祖国・日本を愛しておられる。だからこそ、日本政府の新型コロナ対応の迷走ぶりを、
深く憂えざるを得ない“切なさ”が伝わる。本書を読むと、わが国の政治指導者が「日本モデル」などと誇っている姿が、
いかに底の浅いものかを、痛感させられる。
台湾に比べると、日本政府の取り組みの水準の低さは、目が眩(くら)むばかりだ。
台湾は結局、緊急事態宣言を出さないで、事態を抑え込むのに成功した。
だから驚くべきことに、台湾は今年度の第1四半期(1~3月)の経済成長率は
プラス1.54%だった(シンガポール=マイナス2.2%、香港=マイナス8.9%、
中国マイナス6.8%)。これに対し、日本は前期比年率マイナス2.2%という数値が示され、
緊急事態宣言が出された4~6月はもっと悪化すると見られている
(それは素人でも予測がつく)。台湾での死者は今のところ僅か7名。
同国の人口規模が日本の5分の1程度としても、桁違いの少なさだろう。
感染拡大による犠牲者を最小限度に抑えながら、
経済を徹底的に傷つける愚策も避けたのだ。
更に台湾の学校では、新学期の開始を2週間延長しただけで、
日本がやった約3ヶ月もの長期にわたる「全国一斉休校」のような、
乱暴極まる措置も取っていない。無論、現代の日本人の感覚では強権的と感じられるようなやり方も見られる。
だが、それらも法に基づき、国民の納得を前提としている。
台湾は2003年にSARS(サーズ、重症急性呼吸器症候群)対応で「悲劇」を体験した。
しかし、そこからしっかり教訓を得ていたのだ。政府はいち早く、
新型コロナへの対処方法をまとめた、詳しいガイドラインを国民に示した。なので、日本の「自粛警察」的な、国民同士がギスギスして互いに
監視し合うような空気も、生まれなかったようだ。
本書を読んで、何よりも政治指導者達の誠実で確信に満ちた姿に心を動かされた。
台湾政府が掲げた「有政府 請安心(政府があるので、安心して下さい)」
とのメッセージに偽りは無かった。それだけ頼りになる政府を、台湾の国民は自ら正しく選んだのだ。
タイトルにある「国会議員」以上に、まず安倍首相をはじめ日本の政府関係者こそ、
本書を読むべきだろう。勿論、国民にも広く読まれて欲しい良書だ。
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