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高森明勅
2020.7.3 06:00政治

同調圧力は感染症に危険!

神戸大学大学院(微生物感染症学講座感染治療学分野)教授の
岩田健太郎氏が興味深い発言をされている。

「緊急事態宣言が解除になったものの、街に出ればほとんどの人がマスクをつけています。科学的な視点でいえば、一般的なマスク(サージカルマスク)は、感染を起こしていない人がつけても意味は小さい」「サージカルマスクをつけても、鼻の横、頬の横、顎(あご)の下に隙間(すきま)があり、そこから入り込んできてしまうのです」「一般の人でN95(密閉性が高い医療用マスク)を購入している
人がいますが、その着用の仕方を見ると、(密閉性が高過ぎて)
苦しいからでしょう、隙間をつくって着けている。
これではサージカルマスクと変わらず、飛沫をガードすることは
できません」

「基本的に私たちができる効果的な感染予防は、
手指を清潔にすることなのです」

「自覚症状のない人が他人にうつすリスクは極めて低い」

「実は、マスクが必要な状況というのはかなり限られています。
感染拡大がひどかった一時のニューヨークのように感染者が多ければ、
『みんなが感染者だという前提で考えて、みんなマスクをつけましょう』
というのは妥当な判断です。
ただし、それほど感染者が出た場合には、マスクでは感染予防に
限界がありますから、結局強い行動制限を行い、
ステイホームするしかなくなります。
一方、日本は現時点で東京や北九州で少し感染者が出ている程度。
日本国民はほとんど感染していないと考えられます。
そんな状況でマスクをつけても、意味がありません。
つまり、マスクが必要なほど感染者が出た場合は外出自粛しかなく、
逆に感染者がそれほどいない場合には、マスクは意味を
なさないのです」

「いちばんの懸念は、学校や保育園が子供たちにマスクの
着用をルール化することです。
もし、小さな子供に無理やりマスクをさせれば、これからの季節だと、
熱中症や脱水症状などのリスクも出てくる。
なかには、先生の口元の動きが見えないと内容を聞き取れない子も
いるし、閉塞感(へいそくかん)がつらいという子もいるでしょう」

「もし学校でルールにしてしまうと、少数のマスクを着けていない
子がいじめに遭う可能性もあります」

「同調圧力は、感染症においてはかなり危険です」

「取材で、よく『今回、罰則規定のない緊急事態宣言に従順に
従ったのは、日本人が真面目だからですか』と訊(き)かれます。
私は、真面目だからではなく、日本人は同調圧力に弱く、
人と違うことに耐えられず、右に倣(なら)っただけな気がしています」

「私はいつも、『感染症で大切なのは、人と違うことをすること』
と言っています。
夜の街に行くと感染のリスクが…などと言われますが、夜の街に
出ること自体がいけないわけではありません。
人が密集している繁華街の飲み屋に行けば、それはリスクがありますが、
あまり人がいないようなお店で飲む分にはなんの問題もない」

「日本人はルールを決めると、思考停止してそれに徹底的に
従ってしまいます。
これも問題です。
たとえば、政府が緊急事態宣言を解除した途端、電車は混み始め、
街には人が増え始めました。
緊急事態宣言が解除されても、各々の判断で、リモートワーク、
外出自粛を継続するなどの選択肢はあったと思いますが、
多くの人が出かけてしまった。
政府の方針一つで、これまであれほど徹底して外出自粛
・リモートワークをしていた人たちが、ガラリと変わって
しまったのです」

「誤解を恐れずに言えば、私は政府の言うことなんて、
それほど気にする必要はないと思います。
たとえば、厚労省が新型コロナ受診の目安として
『37.5℃以上の発熱が4日以上続く』としましたが、
実はこの目安、なんの科学的根拠もありません。
基準がないとみんな困るだろうから、一応つくった程度の政治的な
ステートメントなのです」

「私は、別に厚労省を批判しているわけではありません。
感染症の専門家でもないのに、上から『基準をつくれ』と
言われて突貫(とっかん)でつくらされたのでしょう。
厚労省も人手不足で余裕がないにもかかわらず、さまざまな基準をつくらされ、
かわいそうな存在なのです」

「国民も、政府に正しいガイドライン、正しい答えを出せ、
と過大な要求をしていると思います」

「役人や政治家がすべて正しい答えを導き出せるわけがありません。
そんな上からの指示を待たずに、自分の頭で考えて、どうするべきかを
決めればいい。
私たちが追求すべきはゼロリスクではなく、『より低いリスク』
なのです」

ニューヨークで炭疽菌(たんそきん)テロ、北京でSARS
(サーズ、重症急性呼吸器症候群)、アフリカでエボラ出血熱の
臨床治療を経験された、「感染治療学」の専門家からの
貴重な助言だ。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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