東京新聞の吉原康和記者からご著書『令和の「代替わり」
―変わる皇室、変わらぬ伝統』(山川出版社)を送って戴いた。これまで何度も取材に応じて来た記者(編集委員)だ
(一番新しくインタビューに答えた内容は近く掲載予定)。この度の御代替わりを巡るメディア関係者の著書は何種類もある。
だが、単独の記者によって纏められた本は、珍しいのではないか。
今回の一連の出来事の記録というだけでなく、吉原氏独自の切り口が
見受けられて興味深い。
勿論、私のコメントも収められている。同書には、目下、新型コロナウィル感染症の影響で延期されている
秋篠宮殿下の「立皇嗣(りっこうし)の礼」について、
以下のような記述がある。「『立太子(りったいし)の礼』は皇嗣である皇太子の地位を
天皇が内外に明らかにする儀式…明治以降、『立太子の礼』を
挙げたのは、大正天皇、昭和天皇、上皇さま、天皇陛下の4例あるが…
『立皇嗣の礼』に至ってはそもそも(前近代を含め)前例がない。
…『三種の神器(じんぎ)』が天皇の皇位の証(あか)しとされるのと
同様、(立太子礼の中心儀式である立太子宣明の儀の後に、天皇
ご自身が皇太子にお授けになる)壺切御剣(つぼきりのぎょけん)は
皇太子の『護り刀』とされる。…『立皇嗣宣明の儀』と『壺切御剣』の親授(しんじゅ)を済ませると、
秋篠宮さまと紀子さまは、皇居・宮中三殿の殿上に昇ることが
できるようになる。このことを『昇殿(しょうでん)』という」秋篠宮殿下はやがて、
本来は“皇太子”の護り刀とされる壺切御剣を受け継がれ、皇室祭祀の
場においても、皇太子と同様に天皇の祭祀を継承されるべきお立場
として、殿上にて神事に携わられることになる。しかし、これまでも述べて来たように、天皇陛下と秋篠宮殿下は
5歳しかお年が違わない。
望ましくない事故などがない限り、リアルに考えて、秋篠宮殿下が
実際に即位される可能性に低いと見るべきだろう。
そうすると、祭祀の継承について、滞りが生じることにも
なりかねない。皇室典範は、皇太子と皇太子でない皇嗣を、明確に区別している。
将来における秋篠宮殿下のご即位を、あたかも既定の事実である
かのように見なして、それを前提に皇位の安定継承を巡る議論を
進めることは、控えた方がよい。あり得べき、数少ない実効的な選択肢を、自ら放棄する結果に
陥る危険性があるからだ。【高森明勅公式サイト】
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