女性宮家を創設するには勿論、皇室典範の改正が必要だ。
どのように改正すれば良いのか。
対象を内親王に限定するか、それとも女王にまで広げるか。それによって、当然、改正の内容が違って来る。
皇室典範は「永世皇族制」を採用している。
明治の皇室典範以来の原則。
だから、天皇との血縁がどれだけ離れても、女性なら「女王」。一方、「内親王」の場合は天皇の孫の世代までという限定がある
(その次の世代から女王)。
そこで私は、女性宮家を立てる場合、その対象は“一先ず”内親王に
限定してはどうかと考えていた(拙著『天皇「生前退位」の真実』など)。女王にまで広げると、対象となる世代が一挙にエンドレスになるからだ。
これに対し、男性皇族の場合は、世代制限が無い「王」にまで皇位の
継承資格が認められている(その点で親王と王の区別は無い)以上、
それとの均衡から「女王」も女性宮家の対象とすべきだという考え方も、
勿論あり得る。むしろ考え方としては、そちらの方がスッキリしているだろう。
だが、その場合、皇族数がかなり増大する可能性がある。
皇族数が余りにも増えてしまうと、皇位の安定継承には大いに
プラスに働く一方で、国費が当てられる皇族費などの経費が
巨額になるのは避けられない。のみならず、天皇から血縁の離れた皇族などに、
天皇の尊貴なご一族に相応しくないお振る舞いをされる人物が現れて、
皇室の尊厳を損ないかねない。現に戦前、傍系の宮家の皇族の中には、残念ながらそうした傾向も見られた。
従って、永世皇族制を見直して、大宝・養老令のように皇族全体に
世代制限(例えば、古制により4世まで)を設ける必要が出てくるだろう。
無論、今の制度のままでも、運用の仕方によっては、皇族の増大に全く
対応できない訳ではない(皇室典範11条)。しかし、実際の運用に当たっては、様々な障害も予想されるので、
やはり客観的なルールとして世代制限を設けるのが妥当だろう。
そうすると、女性宮家を創設するというハードルに加えて、
永世皇族制から世代限定皇族制への変更というハードルも、
併せてクリアしなければならなくなる。誤解が無いように予め断っておけば、私自身は本来なら、
世代限定皇族制と女性宮家の対象に女王も加える案を“セット”で
実施できるのが、ベストだと考えている。しかし、永世皇族制の見直しには普通でも一定の抵抗感が
生まれやすいだろうに、皇族数の減少への対策が求められている局面で、
それとは逆方向に見える世代限定制を導入する案が、どれだけ幅広い
理解を得られるか、率直に言って不安を禁じ得ない。私が以前、先ずは内親王だけを対象とした女性宮家の創設を
提案したのは、そうした見通しによるものだった。【高森明勅公式サイト】
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