政府が有識者に提示した旧宮家系国民男性の皇籍取得案には、
現存の宮家の「養子」に入るという選択肢があったようだ。
現行の皇室典範では明文の規定で否定されている(9条)。
これは明治の皇室典範の考え方を踏襲した規定だ。
そうした事情もあって、内親王との結婚というおよそ非現実的かつ
非人道的な選択肢よりも、“更に”後ろに回されていた。
養子と言っても、本人の意思を確認して、資質なども見極める
必要がある。だから、未成年者は当然、対象から外れるだろう。果たして、養子に「手を挙げる」人物はいるのか?一旦、宮家の養子に入った後、本人が養家から離れることを強く希望した場合、どう対処するのか?私の個人的な体験に照らしても、民間の国民同士の養子縁組みでさえ、
養家との折り合いが良くない等の理由で、関係を解消したケースを
いくつも見聞している。これが、民間から皇室への養子縁組みとなると、問題は一層複雑だろう。
そもそも、現存の宮家の側のご意向はどうなのか?
法的に養子を押し付けても、受け入れる側に十分な同意がなければ、
決して望ましい結果にはならない。
既に、お2方の皇位継承資格者がおられる秋篠宮家が、
対象から外れるのは、改めて言うまでもあるまい。その他、ご高齢のご夫妻だけの常陸宮家、三笠宮家に合流された
故・寛仁親王のご家族、現在は母宮とご長女だけの高円宮家。
これらのどの宮家が養子をお迎えになるのか。
未婚の女王がいらっしゃる宮家に、未婚の旧宮家系男性が
結婚を介さないで養子として入る、という手順には不自然さが
否めないだろう。かと言って、ご高齢の常陸宮家に新しく養子が入るというのも、
余り現実的ではないのではあるまいか。
しかも、養子に入った男性には皇位の継承資格を認めるのか、どうか。昨日まで民間の一国民だった人物に継承資格を認めるのは、
違和感が強いはずだ。
しかし、継承資格が“無い”父親の下に生まれた子にだけ、
継承資格を認めるというのも奇妙だろう。
更に、養子に入った男性は、その立場が変則的なだけに、
普通の皇族よりも結婚が難しくなる可能性がある。「男系」維持の為(!)に養子に入った男性が、
もし未婚のままだったり、男子を儲けることが出来なかったりしたら、
恐らく想像を絶した“風圧”に晒されることになる。
政府自身が「結婚」案より“後ろ”に回した「養子」案。
やはり至難な選択肢と言う他あるまい。【高森明勅公式サイト】
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