産経新聞(4月16日付)の一面にこんな記事。
「政府が安定的な皇位継承策の検討に向けて実施している
有識者への意見聴取で、戦後に皇籍を離脱した旧宮家の
復帰に関する考えを尋ねていることが15日、分かった。…旧宮家の復帰については
▽旧宮家の未婚の男子が内親王と結婚
▽現存する宮家に養子に入る
▽皇籍取得ーなどの考えを聴いたという」まず、この記事を書いた記者のレベルを疑う。
「旧宮家の復帰」という曖昧かつ不正確な表現に、
この問題に対する当該記者の知識の程度が表れている。
勿論、問われているのは、“旧宮家”という漠然とした
単位ではない。旧宮家系国民男性“1人1人”の新たな皇籍「取得」だ。
しかも、内親王との結婚にせよ、宮家に養子に入るにせよ、
いずれも「皇籍取得」であることには変わりはない。
にも拘らず、それら2つの選択肢とは別に、「皇籍取得」という
選択肢があるかのように分類しているのは、お粗末過ぎる。恐らく3番目の選択肢は、内親王との結婚も養子に入ることも
介在させず、そのまま“直ちに”皇籍取得を認めるというものだろう。
しかし、この記事では、前の二者が皇籍を取得しないかのように
読める。それはともかく、この「聴取」はいつ行われたのか?
2月10日の衆議院予算委員会で、菅内閣官房長官が
「旧宮家系男性の皇籍取得への意向確認は今後もしない」
という趣旨の答弁をしたのより前か、後か。もし前であれば、聴取の結果が思わしくなかったので、
当事者である旧宮家系男性の意向確認を、やむなく断念したこと
になる。逆に後であれば、3つの可能性が考えられる。
1つは、菅長官が虚偽の答弁をした。
もし、皇室についてまで平然と虚偽答弁をしていたのなら、
何をか言わんや、だ。も
う、安倍政権の言うことは何一つ信用できない、
と考えるしかない。2つ目は、当事者の意向を顧慮しないで事を進めようとしている。
だがさすがに、旧宮家系男性が「国民」である以上、
当事者無視はあり得ないだろう。3つ目は、男系維持にも配慮しているポーズを示す為に
“アリバイ”的に行った。
理性的に考えたらこの可能性が一番高いはず。
だが、そうは楽観できない。
旧宮家系男性の皇籍取得が実際に可能かつ妥当かどうか。
これまでどうして、当事者の意向確認も含めて、
きちんと「検討」しないで、長年に亘り放置して来たのか。
私にはそれが何より不審だ。当事者の気持ちを考えると、無責任という以上に、
殆ど非人道的な仕打ちと言うしかない。
非人道的という点では、もし記事が嘘でなければ、
内親王と旧宮家系男性の結婚という選択肢を、対策の1つとして、
政府が躊躇(ためら)いもなく有識者に提示した事実に呆れる。内親王と旧宮家系男性には結婚を「強制できる」
と考えいなければ、このような選択肢は出てこないはずだ。【高森明勅公式サイト】
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