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倉持麟太郎
2020.3.6 10:09

続・緊急事態宣言に関する法整備に関する与野党の愚~僕たちは代替的な選択肢を持っているのか~

前回ブログ(「緊急事態宣言に関する法整備に関する与野党の愚」)で緊急事態宣言に関する法整備について、ベースとなる新型インフル特措法は立憲主義とか民主主義の観点からはザル法で、強力な私権制限を伴う措置がとれるのに、緊急事態の期間上限及び延長について国会への「報告」のみで足りるとしてます。これでは内閣のフリーハンドだから、せめて、国会の事前・事後の承認を要求し、また、緊急事態の認定についての判断プロセスを検証可能にすべく文書の保存等の説明責任を負う旨義務付けるべきなどなどの問題提起をしました。

しかも、これらは、法の解釈でなんとかするのではなく、ちゃんと”法改正”して”明文で規定すべき”、としました。

当然です、内閣とか我々有権者は直接選んでないし選べないし。我々の代表者たる国会が、その立法権に基づいて行政の執行を統制することを通して、最終的には我々がコントロールするのだ、という原理原則を堅持しなければならない。

この原理原則って、目に見えないからこそ、緩め始めたら歯止がありません。腹筋に力入れて、歯食いしばって(ビンタされる直前の感じ)、堅持しなければならないのです。もちろん、すでにゆるゆるなことは百も承知です。すでにゆるゆるなことと、またゆるゆるにしていいかは全く別です。いちいち堅持しなければなりません。

そして、悲しいことに、法律を改正して、明文で修正ができるのは、国会議員だけなのです。

裏を返せば、国会議員にしかできない、とっても尊い仕事です。そんな矜持を堅持できる機会があるのですから。

そしたら、昨日、こんな報道が・・・

↓   ↓   ↓

「自民党と立憲民主党の国対委員長が、5日午前、国会内で会談し、政府が来週提出する改正案について、3月12日に衆議院を通過させることで合意した。」

でました、”「国対」政治”

「国対委員長が会談し、合意した」ってなに?

その他の心ある議員や、有識者、国民の意見や声は?

しかも、我々はこの国対委員長が誰かとか、まったく永久に関われません。

我々あんたたちになんの権限も付与してないよ。民主的無答責の機関じゃないか!

 

国会対策委員会って、政党の一機関です。国会法に規定のある、こういう法案とかの折衝やる機関は議院運営委員会ですが、これを飛び越えて、国対委員長なるポストの政治家が話し合って決める。もちろん非公開、議事録もなく、何が話し合われたかもわからない。

憲法に根拠のある国会議員(憲法15条、43条)と国会(41条)、これを受けて国会法に基づく議院運営委員会(国会法2条)、、、、

これらを飛び越えて国対委員長どうしですべてが決まってしまうなら、民意ってなんなんでしょうか。民主主義ってなんなんでしょうか。

し か も

この「法改正」、私が指摘したような緊急事態に関する期間の上限設定や更新についての「国会の事前・事後承認」について明文での条文追加・修正となるかは甚だ怪しいと思っています。

まさか、野党も附帯決議で逃げようとなんてしてませんよね。

ここ、皆さん注目していてください。

附帯決議というのは、法的拘束力のない、国会の意思表明です。法律の本分からすれば、格落ち!

本でいえば、法律が本文なら、附帯決議は索引か脚注か…

雑誌でいえば、法律が雑誌そのものなら、附帯決議は付録か…

(良い例え思いついたらください)

皇位継承の際の退位特例法の付帯決議に、皇位の安定的継承と女性宮家について速やかに検討するとの規定があったにもかかわらず、この間政府が遅々として動かないのを皆さん目の当たりにしていると思いますが、あれです。

政府はそれを尊重することとされていますが、尊重しているフリしていればずーっと無視していても特に問題ありません。法的拘束力もないから、裁判規範性も薄いです。

今回、緊急事態の期間等々について、附帯決議に書かれていても、それは法的にはほぼ無意味です。むしろ、これは政治的妥協の産物であって、野党が「協力的な姿勢」を見せたことに対する与党からの「手土産」「お駄賃」です。

そんなのもう付き合ってられないよ!!

政治の世界での、閉じられた空間で外の誰にもよくわからな共通言語で語られる死んだ言葉たち。これによって、我々の生活さえ規定されていく悪夢。それでも自分たちの現状を死守する狂気…

こんなときこそ、野党は斜め上の提案を、本筋たる「法律」の形で提案して、より良いものにするという姿勢を見せるからこそ、現在の政権のオルタナティブとして、代替的な存在として、認知されるのではないんですか?

今回、このコロナをめぐる事態で「非協力的」と思われることをおそれた結果与党とのシャンシャン会談を行い、与党提案とまったく同レベルの妥協をしてしまうなら、もし野党が政権とっても同じ事態があったら今の政権と同じことをするということです。

それじゃあオルタナティブとはなりえないんじゃないでしょうか。

僕たちは、僕たちの国の国会に、健全なオルタナティブ・選択肢を持っていないんじゃないか?

そのことをもっと深刻に考えた方がよいです。

今回のメルクマールは簡単。附帯決議か、否か、です。

注視しましょう。

倉持麟太郎

慶応義塾⼤学法学部卒業、 中央⼤学法科⼤学院修了 2012年弁護⼠登録 (第⼆東京弁護⼠会)
日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事。東京MX「モーニングクロ ス」レギュラーコメンテーター、。2015年衆議院平和安全法制特別委員会公聴会で参考⼈として意⾒陳述、同年World forum for Democracy (欧州評議会主催)にてSpeakerとして参加。2017年度アメリカ国務省International Visitor Leadership Program(IVLP)招聘、朝日新聞言論サイトWEBRONZAレギュラー執筆等、幅広く活動中。

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