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泉美木蘭
2019.11.27 23:11日々の出来事

機能していない家族

「幸せな家族」であるように見えながら、
内実は、家族として機能していないということがある。

素敵な夫、優しい妻、お利口さんの息子さん、お嬢ちゃん、
「非の打ち所のない理想的なご家庭で、うらやましいですね」
周囲からはそう見えていても、ただ「形」が完全なだけで、
実は家族間の「心」の交流がまったく不完全で、
誰にも見えない大問題が横たわっている場合がある。

「世間からどう見られるか」という体裁ばかり考えていたり。
学歴や成績など優秀さだけを追い求めていたり。
「私の理想の家庭像」「私の理想の子供像」を押し付けていたり。
大きな秘密や思惑があり、コミュニケーションが歪んでいたり。
親が「私を見て、わかって」というタイプだったり。

特に、親が自分のことや体裁ばかり気にしていて、
子供を表面的にしか見ていなかったりすると、
子供は「親に甘えたい」という承認願望が満たされないために、
過剰に子供らしく振る舞って親を喜ばせたり、
褒められ、認められるために「理想の良い子」を演じたり、
無意識のうちに親よりも大人びて、親に気を遣っていたりする。

そういった家庭の子供が、性暴力被害を受けたとき、
子供は「もしかしたら自分は親に愛されていないのではないか」
という恐れから、親の理想像を破壊しないために、
自分の身に起きた本当のことを言えなくなったりする。

NHKクロ現+でも報告していたけれど、
私が感じていたよりも、こういった状況を作っている家族は
多いのかもしれない。

性暴力は、加害者への怒りを持たなければならないが、
家族との心のコミュニケーションが存在していないと、
打ち明けることもままならない。

打ち明けられない出来事は性暴力だけに限らないので、
家族問題はまた別に考えなければならないとも思うが、
なにしろ「形」は整っていても「見えない」問題だから
とてもやっかいだ。

今後、社会心理学や臨床心理学なんかの見識がすごく
必要になってくるんじゃないかな。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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