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高森明勅
2019.11.16 06:00皇室

大嘗祭は「単純素朴」

民俗学を大成した柳田国男。
大嘗祭について、以下のように述べていた。

「神と君と、同時に御(お)食事をなされる、寧(むし)ろ
単純素朴に過ぎたとも思はれる行事」(『海上の道』)と。
まさに至言だろう。

メディアでは、相も変わらず「秘儀」「秘事」と騒いでいた。
しかし、悠紀・主基両殿の内陣で行われる天皇のご所作については、
その詳細を認(したため)めた史料も多く残っている。
それを元にした精密な研究も公刊されている
(安江和宣氏『大嘗祭神セン御供進儀の研究』他)。
その意味では、取り立てて「秘儀」と言うのは当たらない。

天皇陛下が即位されて先ず新穀(元々はお米だけ。
後に粟〔アワ〕も)を召し上がられるに当たり、皇祖をお迎えして
丁重に新穀などを供えて“おもてなし”をし、しかる後に召し上がられる。
ただ、それだけの事に過ぎない。

まさに「単純素朴」。
ただ、見落としてはならないのは、その新穀が天皇に直属の田んぼの
収穫物ではなく、国家の公的な統治の下にある公民・国民が育てた物に
限られていたという事実だ。
その事によって、大嘗祭は皇位継承に伴う伝統的な儀式の中で、
唯一「天皇ー国民」の関係を総括する意味を持つ。
大嘗祭は天皇と国民をつなぐ祭りだ。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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