ゴダールの映画『軽蔑』(1963年)を観たけど、やたら素敵だった。
モラヴィアが書いた小説『軽蔑』をもとにして、
イタリア人夫婦の別れを描いたもので、
めろめろに愛し合っていたのに、なぜか妻に軽蔑されるように
なった劇作家の夫が、妻の心理をなんとか探ろうと、妻と会話
しながら煩悶するという内容だ。
妻は夫に愛想を尽かし、アメリカ人の男とくっついて、去る。
すごく面白いんだけど、小説のほうはずっと夫の一人称で、
いつまでも悶々と理屈を練っている様子に
「この男、いい加減うぜえやつだな」
とイラつく部分があった。
ところが、ゴダールが映画化したものは、色彩がすごく豊かで、
夫婦のやりとりを、あるアパートメントでの風景そのものとして
眺められるような良さがあった。
むちゃくちゃお洒落だし、
なにより、ブリジット・バルドーのヌードが、良すぎ!
極彩色のインテリアと、ぷりっぷりのヌードが何度も出て来て、
女の私でも見とれた。あれはやばい。
同時期で、カラーフィルムで撮られた映画で、
色使いが印象深いものに『シェルブールの雨傘』(1964年)
がある。
同じヨーロッパでも、イタリアとフランスでは女性像がかなり
違ったんだなと思った。
『シェルブールの雨傘』は、カトリーヌ・ドヌーブが演じる
中産階級ぐらいのお嬢さんが、機械工の青年と恋愛して身ごもる。
だが直後に、青年はアルジェリア戦争に徴兵されてしまう。
観ているほうとしては、ここはひとつ未婚の母として子供を産み、
青年が戦争から帰るまで気丈に待っていてほしいと思うんだけど、
お嬢さんはそれができない。
戦場の恋人を捨て、金持ちの男と結婚して子供を産むことを選ぶ。
映画に描かれている時代のフランスは、今とはまったく違って
封建的な時代のブルジョワ的価値観が根強く残っていて
「夫は妻を扶養する義務を負い、妻は夫に従う義務がある」
というような民法も残っていたようだ。
子供は、家の地位を守るために結婚相手を選ぶのが当然で、
また、未婚の母は、軽蔑される対象でしかなかった。
劇中では、お嬢さんの母親が、未婚で妊娠したことに狼狽し、
金持ちの男になんとか娘を売ろうとする。
恋人と別れたのは、戦争で内政が崩壊した年でもあるが、
当時は検閲で反戦映画が上映できなかったので、その背景が
描けず、でも当時のフランス人には落涙ものだったらしい。
ほぼ同じ年の公開で、同じカラーフィルム大活用の映画で、
かたや、古い時代の価値観に縛られてしまうフランス女性、
かたや、ヌードぶりぶりで夫を捨てて出て行くイタリア女性、
こんなに違うんだなと、ちょっと驚いた。
日本女性は、これからどうなっていくのかな。
しっかし、『軽蔑』のブリジット・バルドーのヌードは、
美しかったあ。