平成の「三大行幸啓」の1つは「全国豊かな海づくり大会」。
始まったのは昭和56年だ。
当時は上皇陛下が皇太子としてお出ましだった。
ご即位後、天皇のご公務に格上げされて、ずっとご自身で式典に臨まれた。
全国植樹祭は言わば「山」を守るのが主眼。
ならば「海」を守る豊かな海づくり大会も、天皇のご公務に格上げして
こそ均衡が取れる。
そのようにお考えになったのだろうか。日本神話の「海さち・山さち」の物語にも示されているように、
日本人にとって海は、山と共に極めて重大な意味を持った。
同大会への天皇のお出ましは、その事実を国民に改めて気付かせてくれる。
天皇陛下は、初めてお出ましになった今年の大会(9月8日、秋田県)の
「おことば」で、以下のようにお述べになった。「四方を海に囲まれた我が国は、古くから海の恵みを受けてきました。
また、山や森から河川や湖を経て海に至る自然環境と、そこで育まれる生命と文化は、
私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。
私自身、以前に鳥海山に登った折に、鳥海山の雪解け水がブナ林を養い育て、
伏流水となって山麓の田畑を潤し、やがて日本海に注いで良質なイワガキを
育んでいると聞き、山と海、そして人間との大切なつながりを感じたことを
思い出します。
このような豊かな海の環境を保全するとともに、水産資源を保護・管理し、
海の恵みと美しさを次世代に引き継いでいくことは、私たちに課せられた
大切な使命であると考えます」と。海と山は決して切り離されたものではない。
上皇陛下が豊かな海づくり大会を、植樹祭と同格の天皇のご公務へと
格上げされた、その背景にあるご洞察へのオマージュのようにも受け取れる。【高森明勅公式サイト】
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