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高森明勅
2019.5.7 06:00皇室

天皇と自由

天皇に自由はあるか。
僅かながらある。
それはどこにあるのか。
 
天皇の3つの行為に即して、具体的に述べよう。
 
先ず、国事行為。
これは全て「内閣の助言と承認」による。
だから原則、そこに天皇の自由はない。
だが、皆無ではない。
例えば国事行為として行われた、
先頃の「退位礼正殿の儀」「即位後朝見の儀」での
“おことば”。

明らかに、天皇(上皇陛下・天皇陛下)の
ご肉声を聞き取る事が出来た。
そこには、天皇がご自身のお気持ちを表明される自由が、
僅かでも存在した事実を窺わせる。
 
次に、象徴としての公的な行為。
こちらにはある程度、天皇に自由が認められる。
象徴たる地位に反しない範囲で、国政権能に関与しないならば、
内閣の責任において、様々な形で国民に寄り添って戴く事が可能だ。
上皇陛下はご在位中の30年余り、その自由を大いに行使して下さった。
 
更に、その他の行為。
その主なものは皇室の祭祀。
祭祀では伝統、前例が重んじられる。
だから当然、自由裁量の余地は狭い。
だが、そうした条件下でも、上皇陛下は平成26年4月11日に
旧「皇室祭祀令」が予想していなかった「昭憲皇太后百年式年祭」
を営んでおられる。
これは上皇陛下ご本人の“お気持ち”による
祭祀だった事実を、私自身が確認している。
 
祭祀以外のプライベートな部分では、
より自由の度合いは高まる。
 
と言っても、いついかなる時も天皇であり、
日本国および日本国民統合の象徴というお立場から、
完全に離れられるのは至難。
なので、大きな制約の中での自由でしかないが。
それでも、天皇に自由が皆無では“ない”。
それは今後、象徴世襲制と矛盾しない限り、
更に拡大し得る余地があるはずだ。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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