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高森明勅
2019.4.8 07:00皇室

「一世一元」の背景

ご一代の天皇に一つの元号。
これを「一世一元(いっせいいちげん)」制という。
 
シナで、明(みん)の時代から
「一帝一号(いっていいちごう)」制が
採用されたのが、ヒントになった。
しかし、改めて元号の歴史を振り返ると、
以下のように整理できるだろう。
すなわち、前近代には3つの改元パターンがあった。
 
(1)代始め改元。
(2)祥瑞(しょうずい)・災異(さいい)改元。
(3)辛酉(しんゆう)・甲子(かっし)改元。
 
これらのうち、
(2)はめでたい兆しや災いがあった時に、
(3)は年のエトが辛酉(かのととり)・
甲子(きのえね)に当たった時に、それぞれ改元した。
 
どちらも近代的知性で考えると、
迷信に基づいた“験(げん)かつぎ”に近い。
だから、いずれ取り止めは必至だった。
 
それで結局、伝統的な(1)代始め改元
“だけ”が残った、と。
 
シナの明・清(しん)で一帝一号制が採用されて
いたのが機縁となり(これは否定できない)、
一方では迷信的な改元への反省も進み
(これも重要)、“代始め改元”による
一世一元制が明治以来、我が国で定着する結果となった。
そう考える事ができる。
 
だから一世一元制を、
専ら「近代的」な新しい制度とばかりは言えない。
 
現在の「元号法」も勿論(もちろん)、
一世一元制を採用している。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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