皇室典範特例法の附帯決議では、
新天皇のご即位後「速やかに」、政府が「安定的な皇位継承を確保する諸課題、女性宮家の創設等」について、「検討を行」う事が
義務付けられている。皇位の安定的な継承の為のプランとして、前から提案されて来たのは以下の2つ。(1)旧宮家系男性が新たに皇籍を取得できるようにする案。(2)女性宮家を創設する案。ところが(1)については、20日の参院財政金融委員会で、安倍首相自身が「(占領下の11宮家の皇籍離脱という)GHQの決定を覆すということは全く考えていない」と明言した。国会の附帯決議でも、具体的に取り上げられたのは(2)だけだった。その理由の1つは、旧宮家の“当事者”達の意向を踏まえた結果だろうか。旧宮家案で実際に対象となる未婚の成年男性は、これまで知られているところでは、ごく限られている。久邇(くに)家の男性(50代後半、元皇族の次男で、国民として生まれた)。賀陽(かや)家の男性2人(共に20代前半、元皇族の孫で、国民として生まれた)。東久邇(ひがしくに)家の男性(30代後半、元皇族の孫で、国民として生まれた)。竹田家の男性
(30代後半、元皇族の長男で、国民として生まれた)。このうち、既に結婚した人がいるかも知れない。既婚者や未成年者が対象者にならないのは改めて言う迄もない。久邇家については、未婚男性の父親(元皇族)が、自著の中で次のように述べていた。「近頃、旧皇族をまた皇籍に戻すべきだという意見もあるようだが、私はこれについては、『何を今さら』というのが正直なところ本心だ。…今さら、皇籍に復して国民の貴重な税金をいただくのには拒否反応がある」と。極めて強い拒絶の意思が示されている。賀陽家の2人の男性の父親(元皇族の長男で、国民として生まれた)は、取材にこう答えていた。「立場が違いすぎ、恐れ多いことです」。これも表現は穏やかながら、辞退の意思表示に他ならない。竹田家の男性は、どうか。大麻取締法違反(所持)で現行犯逮捕・起訴されている。なので、そもそも対象になり得ないだろう。以前、これらの人々に取材したノンフィクション作家の保阪正康氏は、次のように証言していた。「旧宮家の人たちにも何人か会っているのですが…私が聞いたかぎりでは復活を希望している人はほとんどゼロなんです。もう彼らは、われわれと同じ生活者としての視点を持っていますよ。社会との関係性を考えても、皇族に戻る気にはなれないという感じです」と。国民として生まれ、国民として育ち、国民としての権利と自由を憲法で保障された人々に、皇籍の取得を強制することは勿論、出来ない。どころか、そこに“強制の影”が僅かでも感じられたら、皇室に対する国民の素直な
敬愛の念は、たちまち損なわれてしまうだろう。