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泉美木蘭
2019.2.18 23:19日々の出来事

金子邸にて

関西設営隊ホームページに、『トンデモ見聞録』のタイトル
リストができていて嬉しい。
今週は実家にいる間に資料となる週刊誌や本を取り寄せて
読み直し、
ライジングの記事を書いたんだけど、なんだか
ガッついて
一生懸命になってしまい、3日かかってやっと
完成した。

明日配信されると思うので、ぜひお目通し下さい。

午後から時間が空いたので、画家の金子國義邸へ遊びに行って
きた。
金子先生にお線香をさしあげて、貴重本の積み上がった書棚を
見ていたら、養子の金子修くんがあれこれ出してくれて、
珍しいフランスの画集や、翻訳本を見せてくれた。

修くんてのは、もともと大阪で土方をしていたんだけど、
たまたま展覧会で大阪に来ていた金子先生とバーで知り合い、
金子先生が一目惚れ。
その場でスケッチしたり写真を撮りまくったりして、
そして、そのままモデル兼運転手となって縁もゆかりもない
東京へやってきて、金子邸に住み込んで画家助手となり、
古今東西の芸術を教え込まれて、金子作品のすべてを把握し、
最終的に養子に
なり、そして喪主になったという奇妙な人生
を送っている人だ。

切れ長の目で日焼けして引き締まった体は、そのまま金子作品
に登場する若い男性として数多く描かれている。

金子邸で同居することになるや、髪を切られて、服装やズボン
すそ幅、スカーフまですべて先生指定のものを身に着けることが

義務付けられたらしい。
話を聞いている分にはめちゃくちゃ面白いけど、本人は大変だった
ろうなあ。
でも美術や文学、映画、建築にいたるまであらゆる教養があって、
いろんなことを教えてくれるので、私にとって貴重な知人だ。

アトリエのラジカセにカセットテープがセットされたままだった
ので、スイッチを入れてみると、山田五十鈴の声が聞こえてきた。
どうやら昔の映画の音声だけを録音したもののようだった。
全部は聞いてないけど、たぶん幸田文原作の『流れる』だった。

あとで修くんに聞くと、絵を描き始めるまでの空白の時間は、
いつも映画を録音した音声を聞いて、空想していたのだそうだ。
そのほうが頭のなかの絵が空っぽになるらしい。
いざ決まって描き始めると、ソウルとかジャズとか楽しい音楽
に切り替えていたようで、そういう音楽もたくさんあった。

なんとなく書棚から引っ張り出した藤田嗣治の画集のなかに、
何枚か付箋がつけられていた。
猫を抱いた少女の絵や、猫単体の絵だった。
ああ~、なるほど~。そういえば金子作品に、猫を抱いた少年
の版画があったよなあ。藤田からインスピレーションを得たと
言われたら、まったく合点がいく作風なのだった。

藤田嗣治は、ジャン・コクトーが日本へ来た時に案内役をした
そうなんだけど、
吉原遊郭へ行ってみたら、女郎が白塗りで
格子窓の向こうから手招きする姿が「怖すぎる」
とコクトーが
言うのですぐ引き返すことになり、

しかし、その後に鑑賞した歌舞伎では『連獅子』に感動して、
着想を得て、『美女と野獣』を撮ることに繋がったんだって。
野獣のあのモサモサ感は、連獅子だったんだ。
ほかにもいろいろ面白い話を聞いて、収穫が多かった。

テーブルの上に、ケネス・クラークという美術史家の名著が
置いてあったので、ガン見してたら、くれた。
本くれる人は、いい人だ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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