ネットニュースに、香山リカの「アイヌ新法の国会提出と雑音」と題する文章が出ていたのですが、読んでびっくり仰天しました。
香山は、今国会での成立が目指されている「アイヌ新法」について、「当事者らにとっては、法律は必ずしも満足のいくものとは言えないのもたしかだ」とした上で、こんなことを書いているのです。
「日本政府がアイヌから簒奪した土地、資源などの返還やいまだに低いアイヌ家庭の進学率や世帯収入の是正には触れられていない」
香山リカは、「日本政府がアイヌから簒奪した土地、資源などの返還」をすべきだと本気で思っているのです。
だったら、香山は北海道の実家について「アイヌ民族」の人が「ここはアイヌから奪われた土地だ、返せ!」と言ったら、黙って明け渡して立ち退くんでしょうか?
そもそも、民族が消滅するという現象は、アメリカ・インディアンやアボリジニのように、侵略者によってジェノサイドを受けた場合にのみ起こるものではありません。
そんなことがなくても、今でも民族は消滅している最中なのです。
1月23・30日放送のTBS『クレイジージャーニ―』では、写真家のヨシダナギ氏がモロッコのベルベル遊牧民の写真を撮りに行っていましたが、もう現地の人もその存在を知らないほど少数になっており、やっと探し当てた一家族は既に伝統衣装を売り払って一着も持っておらず、もう一家族は、子供たちを街の学校に行かせていて、遊牧民族としてはおそらくいまの親の世代で終わりだろうという状態でした。
そして、結婚式くらいにしか着ないという民族衣装を出してもらって写真撮影には成功したものの、ヨシダ氏は「いま撮れてよかった。20年後なら無理」と言っていました。
ジェノサイドがなくても、近代化という時代の流れのために、いまも民族は消滅しているのです。
そして、民族としてのアイヌが消滅したのも、知里真志保の文章などを見ても明らかなように、これとほとんど同じケースだったと見るべきでしょう。
それを、あたかも和人がアイヌをジェノサイドでもしたかの如く主張し、「土地を返せ」などというのは、歴史の捏造以外の何者でもありません。
ともかく、「時代の流れ」という不可避な理由によって消滅した民族を、税金使って人工的に復活させようという、とてつもなく馬鹿げた……じゃなくて、前代未聞の試みがこれから始まるようです。
やれるもんなら、やってごらんなさいな。結果は見えているけれども。