「光」のお題で詠まれた皇太子殿下の御歌。
雲間よりさしたる光に導かれわれ登りゆく金峰(きんぷ)の峰に金峰山(きんぷさん、山梨県・長野県)は奥秩父連峰の盟主と呼ばれる山。その山容は重厚雄大。ところが殿下はこの御歌で、天地全てを視野に収めておられる。まことに気宇壮大。だから、さしもの金峰山も、殿下の視野の一部でしかない。その上で、雲間から差して来る光に「導かれ」と、へりくだったご姿勢は揺るがない。下(しも)2句「われ登りゆく 金峰の峰に」の、潔く、磐石(ばんじゃく)な据わりようは、尋常ではない。皇位継承へのご覚悟がみなぎる御作と拝した。有難い。皇太子妃殿下の御歌。大君と母宮(ははみや)の愛(め)でし御園生(みそのふ)の白樺冴ゆる朝の光に両陛下へのお気持ちを「白樺」に託してお詠みになった。この御歌で詠まれているのは、両陛下が愛された御苑の白樺が、朝日に照らされて、くっきりと鮮やかに見えている情景だ。白樺は言うまでもなく、皇后陛下の「お印(しるし)」。しかも、白樺が皇后陛下のお印に決まったのは、天皇陛下と最初に出会われた、軽井沢にちなむとされている。妃殿下は、両陛下のお出会い以来の長い歳月に、静かに思いを寄せておられる。ご譲位を控え、これまで長年に亘(わた)り、ひたすら国民の為に努力を重ねて来られた、両陛下への深い尊敬と感謝のお気持ちを籠めて、この御歌を両陛下に捧げられた。詠まれた情景も清々(すがすが)しく、両陛下に相応しい。