平成31年の年頭に当たり、
天皇陛下の御製(ぎょせい)5首と皇后陛下の御歌3首が宮内庁により発表された。それらの中から。御製。生ひ立ちて防災林に育てよとくろまつを植う福島の地に(第69回全国植樹祭)あまたなる人ら集ひてちやうちんを共にふりあふ沖縄の夜(沖縄県訪問)濁流の流るる様を写し出すテレビを見つつ失せしをいたむ(西日本豪雨)御歌。赤つめくさの名ごり花(ばな)咲くみ濠(ほり)べを儀装馬車一台役(やく)終(を)へてゆく(晩夏)御製について、拙い解説を蛇足で付け加えるには及ばないだろう。それぞれ「祈り」「喜び」「悲しみ」、国民への慈(いつく)しみのお気持ちが籠められている。御歌については、外国大使の信任状奉呈式に当たり、大使を乗せた儀装馬車が役目を終えて、皇居のお濠端(ばた)をゆっくりと帰って行く、一見何気ないその姿に、皇后陛下が改めて目を止められた心の内側を拝察すると、胸に迫るものがある。ここでは掲げなかった、「移居といふことを」との詞書(ことばがき)
を付した御歌とも、併せて拝すべき御作だろう。