憲法9条。
その1項は、第2次大戦後の国際法が戦争や武力の行使一般、武力による威嚇をも「違法」とする局面(国連憲章2条)では、ありふれた規定だ。ところが、2項は違う。「戦力」つまり軍隊の保持そのものを禁止している。これは極めて異常。勿論、世界には平時の軍隊不保持を規定している憲法を持つ国が、少数ながら存在する。リヒテンショタイン、コスタリカ、キリバス、パナマの例がそれだ。だが、それらの国々の憲法には、以下のような規定を含む。リヒテンショタイン侯国憲法(1921年)44条1項「武器を保有するすべての者は、60歳に達するまでは、緊急事態における自国の防衛に奉仕する責任がある」コスタリカ共和国憲法(1949年)12条「大陸間協定により又は国防のためにのみ、軍隊を組織することができる」パナマ共和国憲法(1994年)305条(現在は310条)「すべてのパナマ人は、国家の独立と領土の防衛のために武器を持つ義務がある」例外的にキリバス共和国憲法(1979年)のみは、こうした規定を持たないようだ。但し同国は、人口が12万人に満たない上に、国土は赤道付近350万平方キロメートルにもわたって散在する、33の環礁(環状に形成されるサンゴ礁)から成り立っている。更に近年の海面上昇の為、その国土自体が水没の危機に瀕している事で知られている。とてもわが国の国防を考える場合の比較対象にはならないだろう。以上のようであれば、憲法9条2項は世界に殆ど類例を見ない異常な
規定と言う他ないだろう。