靖国神社の社報『靖国』。その7月号から9月号にかけて、國學院大學教授、藤田大誠氏の「戦後の靖国神社と昭和殉難者(じゅんなんしゃ)合祀(ごうし)」と題する連載。靖国神社へのいわゆる「A級戦犯」の合祀などを巡る基本的な論点を取り上げた論考だ(勿論、靖国神社が言う「昭和殉難者」は「A級戦犯」だけを指すものではないが)。精緻・堅実な研究で高い評価を受けている同氏が、かかるテーマで靖国神社の社報に文章を載せられた事実自体、注目に値する。勿論、社報という紙幅の限られた媒体ゆえに、厳しい字数制限があり、3回に亘(わた)る連載とはいえ、執筆には苦慮されたのではないか。だが、抑制的な筆致で基礎的な事項を1つ1つ丁寧かつ正確に再検証された、有益な論文に仕上がっている。今後この方面に言及する場合、予め必ず目を通しておくべき文章と言える。
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