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泉美木蘭
2018.5.1 06:00

朝日新聞、悪魔の詩

朝日新聞の社説「セクハラ 沈黙しているあなたへ」、
怖くて背筋がぞわぞわした。
うちは東京新聞がメイン、朝日はデジタル版を有料購読していて、
必要なとき必要な記事を
パソコンで見ている状態なんだけど、
これは思わず印字してしまった。

「私には、あなたの気持ちがわかる。
 あなたは、私だ」

なんでこんな、英語調の文章なんだい?
英語のポエムでも翻訳したのかな?

日本人って「I」も「You」もごちゃごちゃ融合してる人が
多いから、これじゃ人の傷口から侵入する怪しい宗教勧誘の
セリフみたいになってるし。
個のない人を優しく慰撫するような、呪いの言葉でしょ。

「誰にも知られない、つらい思いをしている人に朝日新聞は
全力で共感しておりますよー」
ってアピールしたい魂胆が見え見えすぎるし、
「あなた」と「私」の区別ぐらいつけてくれないと不気味すぎる。

社会に出てから「セクハラという現実」に出くわすまでを
小学生に語り掛けるようにつづり、
声をあげた被害者はひどい目に遭ってきた、私は許さない、
自分は関係ないと思ってる人も、人の心と尊厳を破壊する
ことに加担し、社会を暗闇へ歩ませているのだ、
さあ立ち上がれ! 時は来たぁ!

…みたいな、呪いの詩が続く。

「この先も続くはずのキャリアを、失うのは怖い。
 だから、我慢することにした」

って、今回の件は、そういう取材体制のなかに女性記者を
組み込んできたのが、テレ朝側だったという話じゃないか!

「『自分は関係ない』と思っていませんか。でもきっと、どこか
で関係している。職場で、街頭で、酒場で、見たり、居合わせ
たりしたことはないですか」

って、酒場つぶす気か!!

朝日新聞はこの社説で、

「あなたは弱くて非力で悲しくて、個がなくて何も言えない、
 かわいそうな弱者ですよね」

と弱者認定を行い、弱者としての覚醒を促し、

「大丈夫。私も個がない。あなたも個がない。あなたは私。
 みんなあなた。みんな私」

みたいな言い草で、女の“個のなさ”を肯定するために、

言論弾圧を広めようとしているんだから根本的に大間違い
すぎて困る。

それじゃ、なくせるセクハラもなくなりませんって!

「個のない女性の存在を守るために、同意のない性的言動は
個々の関係性も、状況も、経験値もすべてひっくるめて、
まとめて弾圧しましょう」

という話になってるんだから。
悪魔の詩だよ、これ。

セクハラ・パワハラはなくしていくべきだと思っている。
だけど、朝日新聞のやり方は根本的に
「女は個のない弱者のまま守られるべき」という差別意識が
下敷きになっているから大問題。
こういうのを「筋悪」っていうんじゃない?

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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