ゴー宣道場。
井上達夫氏の、法哲学者として一切ぶれることのない原理原則を
ありとあらゆる角度から全力直球でぶつけていく迫力と緻密さ、
回転の速さは恐ろしいぐらいだったし、
その井上氏の意見に対して、怯んだり揺れたりすることなく、
政治家として、非常に高い説明能力と責任感、そして胆力の凄さを
示された枝野幸男氏は本当に凄いと思った。
しかも枝野氏は、民進党代表選出馬という、非常に張り詰めた立場で、
ゴー宣道場に参加されていた。
同じ場に、もし現閣僚が、官僚のバックアップなしで座っていたと
したら…?
あるいは、“小池人気”で勝利した都ファの議員たちだったら…?
一番白熱したのは、やっぱり後半の、憲法学者としての井上氏と、
政治家としての枝野氏の自衛隊合憲vs違憲のバトル。
井上氏の話には、子供のころから感じてきた矛盾をはっきり言葉に
してもらっただけでなく、チャイニーズ・ジョークを交えた笑いも
乗っていて、うんうんと頷くことばかり。
そこに、政治家として反論するあの時間帯の枝野氏の発言だけを
切り取れば、「…政治家ってこういうものなのかなあ?」という、
ネガティブな印象を持ってしまう人もいただろう。
けれど、政治家・枝野氏の発言のキモは、
「共産党以外のいまの政治家は、過去に『専守防衛と個別的自衛権は
合憲である』という政府見解にもとづいて公権力を行使している立場
である」
「現在の政治の世界に自衛隊違憲論は存在しない」
「もちろん井上氏の『あるべき論』は理解できるが、権力を行使し、
自衛隊に予算をつけた以上は、無責任に意見をひっくり返すことは、
政治論として許されることではない」
という部分。
「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば命を張って
守ってくれというのは、あまりにも無責任です」
と言って、一般市民の同情を誘いつつ自衛隊違憲論を持ち上げた。
「違憲だが命を張ってくれ」と思いながら、無責任に公権力を行使
しており、
改憲するためなら、踏襲してきた政府見解も、国会での答弁も勝手
に放り投げてしまう支離滅裂な政治家だということになる。
自衛隊への同情を煽られるから、うっかり騙される人がいるかも
しれないが、権力の担い手として、政治家として、筋が通らない。
…ただ、この部分だけを聞くと、今度は「左翼?」と見えたり、
「そもそも合憲論に無理があるのに…」と思ったり、自衛隊への
同情を誘った側が強く感じるというのもまた重ねて難しいところだ。
もっと踏み込んだ話を、安倍案なんか子供騙しだとはっきり見えて
そしてそれができるのは、やっぱりこの苦渋のなかで、胆力を蓄え
続けてきた民進党にしかできないと思う。
とてつもない緊張感のなかで言葉を繰り出していく枝野氏の凄さを
知って、そう確信した。