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泉美木蘭
2017.1.9 15:50

「若者の車ばなれ」

「若者の車ばなれ」という言葉をちらほら聞くけれど、
ソニー損保が新成人に行った「カーライフ意識調査」によると、
新成人の73.3%が、「車の所有に前向き」なのだそうだ。
その内訳は、


「自分の車を持っている」16.8%
「自分の車を購入する予定がある」6.8%
「購入する予定はないが、いずれは欲しい」49.7%

新成人の困った姿を毎年ニュースで見ているので、あんな調子で
もう車を持ってる奴が16.8%もいるのかよと一瞬びっくりしたけれど、
よくよく考えれば、親に買ってもらった富裕層大学生もいれば、
早くから働いている若者もいるのだと思う。
都市部より地方の人の比率が圧倒的に多かった。

一方で、
「車を所有する経済的な余裕がない」という回答も68.4%。

東京に住んでいると、車を持っている人はたいてい駐車場が高い、
電車のほうがいい、車なんてお金がかかるだけだとぶつぶつ言うの
をよく聞くけれど、
正月に実家に帰ると、うちなんかはコンビニへ行くにも車がいるし、
現実には、仕事にも買い物にも車がないと話にならない。
そういう地方のほうが多いと思う。

若者は、車に興味がない世代として「車ばなれ」しているのではなく、
欲しいと思っているし、あるいは、必要なのに、経済的な問題で
「車を持つことができない」というのが現実なのだ。
「結婚しない」のと「お金がなくて結婚できない」の違い、
「子供を産まない」のと「生活がぎりぎりで子供を産めない」のと同じ。

このごろ東京都内は、『わ』ナンバーが増えたように思う。
『わ』ナンバーは、レンタカーか、カーシェアリングの車だ。
私の友人も、大きなものを買いに出るときだけ、カーシェアリングを
使って、15分単位で車を借りて、使った分だけ料金を払う契約にしている
と言っていた。

でも、この状態じゃ運転免許の保有率も下がっていくのじゃないだろうか。
私は大学生のときに取得したのだけど、
当時は、まだバイトをしまくっても卒業できる余裕のある時代だったので、
将来、自分が車を買うことはなさそうだとは思いつつも、
「とりあえず身分証明のためにとっておこう」と教習所に通った。
25万ぐらい払ったような気がするけど、バイト代でなんとかなっていた。
友達は、合宿で免許をとるんだと言って、わざわざ小豆島へ行って、
遊びながら教習を受けて帰ってきた。

しかし、ブラックバイトに追われる今の学生や、奨学金地獄に苦しむ学生
には
とてもそんな余裕などないと思うし、

学生でなくとも、卒業するなり借金地獄になるような状態や、低賃金労働や
不安定な雇用で貯金もまったく増えないような状況だと、
「とりあえず身分証が欲しい」だけでは教習所にお金を払うことはできないし、
必要に追われて、生活を切り詰めてでも免許をとろうか、いややめておこうか
・・・これもかなり勇気のいる決断になってくるのでは。

「若者の車ばなれ」とだけ聞くと、そういう文化なのかなあ、なんてフワフワと
したイメージを持ちがちだが、現実は厳しい。
泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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