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泉美木蘭
2016.12.13 05:22

将来不安の与える影響

大学の学費無償化についていろいろな立場の人からの意見が
読めて、勉強になります。
いろんな立場の人が感じる「将来不安」が、どこに、どんな影響
を与えており、日本全体にどんな結果を招いていくのかを、
いろいろな視点で考えてみる必要があるのかなと思います。

大学の学費と聞くと、私はまずは、最近のNHKなどで報じられる、
奨学金破産の学生たちの姿が思い浮かびます。
奨学金を背負って、ブラックバイトに搾取されて学校に行けなくなり、
単位を落とし、自己破産に追い込まれる学生たちの姿などがたびたび
報じられます。
彼・彼女らは決して「なんとなく大学に入った」という人ばかりではなく、
自分で決意して入ったからには、将来のために必死で勉強して、
なんとか卒業しなければと時間を捻出していました。

そういった様子を見ると、具体的になんとか手当してあげてほしい
という同情心がわきます。
その一方で、こうなってくると、やっぱり、これから将来、
子供を産み育てる立場になっていく人たちが、どう感じるだろうと
思います。

将来が不安、いい仕事につけるかどうかが不安、
食べていけるのかどうかが不安・・・
こいういった種類の不安は、「不安にならなくても、大丈夫だ」
「いろんな道がある」と啓発されたとしても、
多くの人には、「そうはいってもウチの現実はさ・・・」という方向へ、
逆に不安や疑念を強化させてしまうところがあるのではないかと、
わたしは感じるようになりました。
「階層化のなかへはまっていけば、それなりに生きていけるから」にも
聞こえます。

そしてなにより、「子供を生むことが不安」につながってしまいます。
子供を生む時期に入ったけど、自分たちの将来の不安も払拭され
ない状態のときに、「大丈夫だ、いろんな道があるから」と説諭されて、
ああ、そっか! と納得して子供を生む人が大勢いるのかな、と。
私みたいな特殊なタイプならあり得ますよ、でも一般的には、
ただ「出産」を決意するだけでも結構な覚悟なのに・・・どうだろう?

子供が生まれなければ、そもそも大学も存在できなくなっていきます。
衣食住の環境が整えば、自然に子供は増えていくととらえると、
やはり、膨大な学費の問題は、付随する必要な仕組みを作ったうえで、
国民の負担から降ろす方向にしたほうがいいように今は思っています。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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