天皇陛下のお言葉を聞きながら、これ以上ない誠実なお姿と
深く広い慈愛に目頭が熱くなった。
ただ単純に年齢的に疲れてきたからやめさせてほしいという
私的なご希望などではなく、あくまでも国民のため、これまでの
長い歴史と、この先の未来の国のため。
「全身全霊」という言葉は、天皇陛下にしか使えないもののよう
にすら感じた。
さらに「天皇の終焉」として、ご自身が崩御されたのちの国民や
皇族方への負担まで思いを馳せられたこと、この深いお心が、
わからないという人などいないと思う。
高森先生が道場でご紹介された、
平成6年6月、天皇陛下訪米前の文書によるお言葉が
脳裏によみがえる。
「日本国憲法には、皇位は世襲のものであり、また、天皇は
日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であると定めら
れています。
私は、この運命を受け入れ、象徴としての望ましい在り方を
常に求めて行くよう努めています。したがって、皇位以外の
人生や皇位にあっては享受できない自由は望んでいません」
私は道場を通して、やっと天皇皇后両陛下の「お言葉」に
込められている強い意味を知り、宮内庁のサイトや、
本にまとめられているものを読むようになったのだけど、
平成8年の皇后陛下のお言葉も思い出される。
お誕生日に際して、若い世代を中心として皇室への無関心層
が増えていることを問われて、こうお答えになっていた。
「常に国民の関心の対象となっているというよりも、国の大切な
折々にこの国に皇室があって良かった、と、国民が心から安堵し
喜ぶことの出来る皇室でありたいと思っています。
国民の関心の有無ということも、決して無視してはならないことと
思いますが、皇室としての努力は、自分たちの日々の在り方や
仕事により、国民に信頼される皇室の維持のために払われねば
ならないと考えます」
どこまでも、ご自分たちの「努力」「日々の在り方や仕事」に言及
され、あくまでも国民が心から安堵することを第一にされる姿。
一度限りの人生をかけて、すべての自由を望まずに取り組まれて
いるということの尋常でなさを、改めて受け止め直さなければなら
ないと思う。
今回の天皇陛下のお言葉を聞いて、ほとんどの国民が、
陛下への信頼と敬愛の念を改めて思い直したし、
願いをかなえて差し上げたいと思ったとおもう。
皇室典範改正に向けて議論を進めてほしい。
特別法なんて、とってつけたような、しかも憲法違反のやり方では
陛下のおっしゃる
「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いて
いくこと」
にはつながらない。
10分以上のメッセージを読み上げられたあと、一呼吸おかれて、
最後におっしゃられたひとこと、
「国民の理解が得られることを、切に願っています」
この重みを胸に抱いた議論と、早急な解決がなされてほしい。