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泉美木蘭
2016.7.17 04:03

誰が独裁してるかが見えない独裁

「改憲反対」「平和憲法維持」のために安倍政権批判をする人たちが、
よく安倍首相をヒトラーになぞらえて、ちょび髭を描き込んだ似顔絵を
作って、ネット上にばらまいていたりするんだけど。
そういうイラストをぼんやりと眺めながら、そりゃ、政治としては非常に
困った独裁状態だと思うんだけど、
『新自由主義』というもの全体をよくよく眺めたら、
本当の独裁者は、もう政治家より、1%の超富裕層だよと言ったほうが
いいんじゃないかと思えてきた。
こう言ってしまうと、疲弊している人は、ますます「上を見ても仕方ない」
の心理に入ってしまうかもしれないけど・・・。

「会社は株主のもの」になってしまったところから、
肥え太り続けるスーパー投資家や、グローバル企業のタガがはずれて、
政治家はそこにどんどん飲み込まれていって、
「国家は富裕層のもの、グローバル企業のもの」になりつつあるぞ、と。
株式会社アメリカ、株式会社EU、株式会社日本になってるぞ、と。

この形が出来上がっていくと、すごく危ないのが、中東や北朝鮮などの
独裁国家のように、「この人が独裁者!」というわかりやすいアイコンが
なくなるところではないか。
「あのグローバル企業が、あの投資家が動かす会社が、ひたすら私腹を
肥え太らせて租税回避し、おかげで貧困層がどんどん増えてるんだぞ!」
と言ったところで、そういった企業の提供するサービスを、大勢の人が
「・・・へ? 日常的に利用してますけど? なくなると困るんだよなあ」
という状態になってしまうわけだし。
ひとり政治家を引きずり下ろしたところで、どんどん似たようなのが出て
くるだけで、たどるのは劣化の一途だし。

こんな社会の形はおかしいじゃないかと指摘し、反対票を投じる段階へ
向かうには、学問や国語の力通して、思想を蓄えたり正常な思考力を
保つことが必要になると思うけれども、
新自由主義のもとでは、「効率が悪い、金にならない」ものは淘汰されて
いくことになるから、その学問の機会もいつの間にか失われてゆき、
持つべき正常な反骨精神も同時に失われて、
あとには、独裁者=超富裕層に都合のよい家畜羊と化した烏合の衆が
右往左往したり崖から飛び降りたりしているだけ・・・。

家畜羊に堕さないようにいるには、

「あー、もうなにも考えたくない」
「あー、もう目先のスマホの画面だけ指でつついていたい」
「あー、もう快楽だけに生きて、どんづまりになったら死ぬしかない」

という、投げやりで堕落した終わりのない快楽への欲望に飲み込まれ
ないようにしてなきゃならないから大変かもしれないけど。
思考のたのしさ、発見の快感って、そういう投げやりな快楽を凌駕する
すがすがしさがあるもんね。
それを伝えるための活動をしていくしかないよね。
そういう、すがすがしい快感が伝わるような文章が書けるように、もっと
腕を磨こっと。

新自由主義なんて、ほんと、さっさとやめたらいいと思うのになあ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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