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泉美木蘭
2016.6.29 03:04

貧乏に孤立を強いて殺す日本

貧乏ではそう死なないけど、孤立には殺されるんだよね。
現代の日本の貧困問題は、貧乏に孤立を強いるものだと思う。

ライジング「生活保護費に潔癖を求めるせちがらい世の中」を読んで、
パターン化、ポジション化してしまった人間って本当に不寛容で、
社会を生きづらいものにしていくんだなと、改めて思った。
生活保護を受けている人が、どんな住居で、どんな日々を送っているかを
知らないから、テレビやネットで『情報』として流される、
ごく一部の詐欺を
槍玉に挙げて、セコい、ズルい、税金ドロボーめ、と叩きまくる。

ずっと書いてきた「となりのおじさん孤独死事件」は、今回の配信が
最終回になったけど、ここに登場する「アヅマさん」は、
どうしてそうなったかは知られていないが、生活保護受給者専用の
物件に住んでいる人、だ。
生前のアヅマさんには、たびたび迷惑こうむって右往左往したけど、
だからって、
「生活保護のくせに昼間から酒を飲んでいるとはどういうことだ!」
とは思わなかったなあ。たとえ友人がそう言ったとしても、とても同調
する気持ちにはなれなかっただろうな・・・。

生活保護費は、冬場は燃料費として地域ごとの気温に応じた加算が
あるそうだけど、昨年はその冬の燃料費が20%前後削減されたそうだ。
幸いにも東京都は、暖房を削っても、布団にくるまって耐えうる気温では
あるけれど、
アヅマさんが暮らしていたのは、エアコンも風呂もない築50年近い物件。
気密性のあるマンションとは違うから、体の冷えがおさまる程度に部屋を
あたためるには時間がかかったろうし、雪降る日にぶるぶる震えて帰宅
しても、湯船につかって体を温めることもできないのだ。

以前、秋田の友人の家に泊まったとき、大雪のなか歩いてやっと到着して、
居間に通されたとたん、部屋のあたたかさですぐに生き返ったような気分
になったことを思い出す。
生活保護費が削られると、冷えた体をあたためる温度にすることが難しく
なる世帯も出るという。
そもそもが暖房設備だって老朽化している、安い賃料の物件に暮らすしか
ない人々なのだ。
世間が「税金ドロボーめ!」とバッシングしている様子を見れば、
生きるのに最低限の要望も言えなくなる、孤立した人がどんどん増える。
その孤立が人を殺している。
これ以上いじめてどうするのだ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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