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泉美木蘭
2016.6.22 09:15

ハリウッドが謝罪・・・民主主義の先進国、アメリカの惨状

日本では8月に公開される映画『X-MEN:アポカリプス』について、
アメリカ本国で、その広告や予告編のなかに、
「女のミュータントキャラが、男の悪役キャラに首を絞められるシーン
が使用されている」
として、主にネット上で批判が殺到し、
映画を手掛けた20世紀フォックスが謝罪してしまったという事件が
あったらしい。その広告の写真が、これだ。

なにがだめなの?
ヒーローものの映画広告に、眺めて安心するシーン使ってどうするの?
それとも、このシーン、男女が逆ならいいわけ?

苦言を呈したローズ・マッゴーワンというテレビ女優によると、

「フォックスが、女性への平然とした暴力を、映画を売るための手段だと
思っていることが一番の問題。広告では何の脈絡もなく、ただ女性が
首を絞められている」

「これに携わった人たちは鏡をよく見て、どれだけ社会に影響を与える
ことなのか考えてみて。もしこれが、黒人男性が白人男性に首を絞め
られている画だったら? もしゲイ男性とヘテロ(異性愛者)だったら?
もっと大問題になっていたはず。だからこの過ちを正しましょう」

だって。しゃしゃり出てきた女性団体も、

「観る人にどれだけの影響を与えるものか考えてほしい」

ひどいね。
アメリカでは「女性の権利」問題が、人種差別問題、同性愛者問題と
一緒の扱いになって、創作物の表現を弾圧しているのだ。
そして、扇動されたネット民は、映画会社を謝罪させるんだから。

そりゃ、「アメリカ様についていけ」の日本も、同じ状態になるわけよね。
最近は、ニュース番組も、バラエティのロケ番組も、写り込んでしまった
一般の通行人には、問題になるのを避けてモザイクをかけるから、
画面を見ているだけで閉塞感でいっぱいだ。
窮屈さを感じて、疲れてしまう。

このごろ、世界の僻地へロケに出たり、日本に来た外国人に密着する
番組が多いのも、背景には
「外国人なら、日本で放送すると言えば、モザイクかけずに済みやすい」
という理由があるそうだ。

うざい潔癖王国の学級委員が、うざい金切り声を上げて、うざいバッシング
をしてるのに、流されて、「それおかしいよ」と引き留める勇気が失われ、
どんどんうざい優等生になっていく。

映画の感想ばかり書くと、映画を見る暇のない小林先生が気の毒に
思えて遠慮してたんだけど、
このあいだ、アメリカで異様に大ヒットしまくってるというR指定映画
『デッドプール』も見たんだよね。
スパイダーマンのような恰好の、《クソ無責任ヒーロー》が暴れるという、
冒頭からエンドロール後のラストシーンまで徹底的にふざけまくって
下ネタ連発しまくる、とことんゲスい、たしかにR指定のヒーロー映画
なんだけど。

この作品で、主人公デッドプールは、次々と悪党を凄い残忍さで
ぶっ殺すんだけど、そのなかに女の悪党がいて。
床に叩きつけて、さあトドメを刺せる状態になった、という時に、
デッドプールが観客に向かってコミカルに叫ぶんだよね。

「ここで女を殴ったら性差別!? 殴らないのが性差別!?」

そうなのよ。
性差別と平等を叫ぶなら、論理的には、他の男の悪党同様、
女の悪党も容赦なくぶん殴られて、ぶっ殺されなきゃならないのよ。

R指定じゃなかったら、そもそもこのシーンごっそりカットだったかも。
自由の国・アメリカの民が、ハリウッドの作品をゆがめているんだもんなあ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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