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泉美木蘭
2016.6.20 04:22

政治的公平をロックに求める日本の子羊たち

毎年7月末に開催されている新潟県苗場の「フジロックフェスティバル」、
国内外200組以上のバンドが集まる一大ロックフェスということで、
私の周りにも、毎年すごいキャンプ道具を準備して、がっちり3日間、
楽しんでくる友達が大勢いるんだけど・・・

今年はそのフジロックに、シールズのメンバーが参加することが発表
されたらしく、ネット上で批判が噴出しているらしい。
ほうほう、シールズのあの酷すぎるお子ちゃまっぷりと、「選挙行こうぜ!」
みたいな《体制派ソングっぷり》に対して、ロック魂を持つ人々からの
ブーイングが起きたのか?

・・・と思ったら、こんな書き込み↓↓↓ばかりで、超絶びっくりした。


「体制批判、政治色の強いバンドが多すぎ。絶対行かない」

「アーティストはすぐに体制批判を持ち出す」

「音楽に政治持ち込むやつ嫌いやからフジロックも嫌いになる」

「ミュージシャンってなんで反体制思想な人達が多いんだろうな。
それがカッコいいって思ってんの、カッコ悪いから」

「音楽に政治を持ち込むと、持ち込まれたものに賛成でない側
の人々を
バッサリ切ることになると思うのだ……」

「まあ音楽に政治を持ち込むのは自由だとは思うんだが、いい曲
だって感じて買った作品があってそれが反権力を歌ったソングだと
後で知ったら嫌な気持ちにはなるかな。そんな気持ちで買ったわけ
ではありません的なね」

この人たち、ロックのなにを聞いてたの???
「いい曲だと思って買ったのに、それが反権力ソングだと知ったら
嫌な気持ちになる」
って、まったく酷い。酷過ぎる。

大体、フジロックが好きな人は、ボブ・ディランを大好きだと思うけど、
じゃあ、ボブ・ディランがどういう姿勢で歌を作ってたかを知ったら、
嫌な気持ちになるってぇの?

アウトドアが大好きで、自然のなかで音楽を満喫したい人の多くは、
ボブ・マーリーのレゲエが大好きだと思うけど、
どんな思想が背景にあるかを知ったら、嫌な気持ちになるわけ?

反骨精神、反体制精神こそが、ロックの魂なんですけど。

ゴスペルもブルースも、奴隷時代の黒人たちから生まれた音楽なん
ですけど。ソウルもそこから生まれたんですけど。
黒人ラップなんかも、反体制、社会批判以外の何者でもなかった
わけだけど。

音楽と格闘技が合わさったカポエラも、武術の鍛錬を禁じられていた
黒人奴隷が、武闘を舞踊に置き換えて、音楽にあわせてダンスの
ように蹴り技を
訓練したところから生まれたんですけど。

サンバだって、めっちゃ陽気なものというイメージがあるけど、
ただ
サッカー見ながら踊り狂うためだけの、発散のための曲や、
アメリカのレーベルから発売されたノリのいい酒池肉林ソングばかり
がサンバじゃないです!
(そもそも踊り狂うための音楽が生まれること自体、民衆の不満や、
ストレスが底にあるからだと思うけど)

ブラジルのサンバの名曲の多くは、哀愁漂う美しいメロディーのなかに、
貧困格差を嘆き悲しみ、未来の暗さを喘ぐ、反体制、現社会を憂う
歌詞
が多いんです。


《14歳の時、ボロの服と、ボロの靴で
楽器屋のショーウインドーに
おでこをつけていた僕に、父は言ったんだ
「やめておけ。この国で夢は見られない」
だけど僕はいま、サンバを歌っている
こうして僕はいま、サンバを歌っている…》

そして、こういった憂いのラインのサンバが、ボサノヴァや、
ブラジリアンジャズへと繋がっていきます。

政治的公正を音楽に求める日本人の子羊っぷり。
体制派ロックを求めてしまうという酷い家畜っぷり。
だったら、「選挙行こうぜ」のシールズなんて、まったく
おあつらえ向きで、いいじゃないですか。
どーなんですか!? 大丈夫ですか!?

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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