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泉美木蘭
2015.12.28 06:50

映画のほうの『キング・オブ・コメディ』

あ。そっか。きのうのブログ、フューチャーじゃなくて、フィーチャーだった。
とにかくフューチャーに至るまでフォーエバー二度とフィーチャーしないで
ほしいです。
うっかりルー大柴が出ました。

テレビつけるたびにキングオブコメディ高橋が連行されていくので、
『キング・オブ・コメディ』という映画のタイトルが目にとまり、
そのまま借りて観ちゃったよ。
『タクシードライバー』のスコセッシ監督×ロバート・デ・ニーロのコンビで、
同じような妄想癖のある男の奇行が描かれていくんだけど、
「コメディ」と名がついているのに、こっちのほうがはるかに薄気味悪い。

主役の男は、母親とともに実家に暮らすニートの中年男で、
自分が大スターのコメディアンになったという妄想のなかで過ごしている。
自室にTVショーの書割や、憧れのコメディアンの等身大パネルを置き、
それを相手にひとりで饒舌にしゃべってはスター風情を気取ったりして
悦に入っているんだけど、この姿が、やたらキモイ。
ファンからサインを求められるという妄想の最中に、
現実の母親から「お前、なにやってるんだい!」と声をかけられるのだが、
母親には「うるさいんだよ、邪魔しないでくれ!」と怒鳴り返しておいて、
そのうえで、ふたたび妄想の相手との会話に浸ろうとする。

女と話していても、憧れのコメディアンと本当に対面している最中でも、
あくまでも自分は才能あふれる大スター。
テレビスターとだって対等に話せるボク。
誰かが軌道修正してあげようとしても、
見たくない現実は徹底的に見ようとしない。
自分にとって心地よい妄想から外れる話は、一切聞き入れない。

そのうち、男の妄想は、現実の世界に解き放たれてしまう。
憧れのコメディアンを誘拐・監禁し、自分がそのTVショーに出演して
しまうのだ。
もちろん、周囲は警官に取り囲まれており、被害者を保護するまでは
男の妄想に付き合って、番組がすすめられてしまうのだが・・・
当然、逮捕。
ああー、こっちのキング・オブ・コメディも連行されていくよお・・・!
そしてラスト、これは妄想なのか、はたまた現実なのか??

 
程度の差こそあれ、日本中にいっぱいいそうな人、ってところが
また薄気味悪さを倍増させる。
1982年の作品ということだけど、今、ピッタリはまるのでは。

でもキンコメは、相方さんがほんと気の毒だなあ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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