電車の優先席。
モヒカンヘアーに、鋲の飛び出したライダース、全身にチェーンを
じゃらじゃらぶら下げたパンクロッカーが座っていました。
耳のヘッドフォンからは、チャカチャカと不快な音が漏れており、
パンクロッカーは、身体を揺らしてひとりで楽しんでいます。
そこへ、おばあさんが乗り込んできました。
おばあさんは、パンクロッカーの目の前で荷物を持って立っています。
「くっそう、なんで俺の目の前になんか立つんだよ!
せっかく楽しんでるのによお! ああ、腹が立つ!
さっさと座れ、このクソババアが!」
パンクロッカーは、凄い勢いで悪態をつきながらも、さっと立ち上がり、
おばあさんに座席を譲りました。
すると、席に座ったおばあさんが、チッと舌打ちをして、つぶやきました。
「チッ…このクソガキめ。あんなやつ生きててもなんの価値もないわ」
この捨てゼリフを聞いて、おばあさんの右隣りに座っていたスーツの男性が、
立ち上がって、パンクロッカーのところへ説教しにいきました。
「弱者に向かってあんな態度をとることはないだろう」と。
さて、あなたはこの様子を、おばあさんの左隣りの席で目撃していました。
おばあさんが、あなたのほうを見て、
「ねえ? どう思う? あのクソガキのこと」
と、同意を求めてきました。
さあどうしましょう。一番、道徳的な人は誰なのでしょう。