ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2015.10.6 16:31

『ドローン・オブ・ウォー』観て来た。

今日こそシリアの映画を観に行こうと思っていたのに、
また時間が間に合わなくて、シネコンに移動して
『ドローン・オブ・ウォー』観て来た。

日本じゃ官邸だの大使館だの城だのに大流行絶賛墜落中のドローンだけど、
これは本来の殺戮兵器としての正しい使い方をリアルに描いている作品。

アルカイダ一掃作戦で実際に行われたドローン殺戮にもとづいているらしいけど、
まるで空爆ゲームのようにモニターを見ながら、遠隔で現実感の薄い殺戮を
行っていく様子は、あまりにも不気味で、
ほとんどカルト映画を観ているような感覚になった。

しかし、上空3000メートルからの映像で、地上を歩く人間の個人の識別は
もちろん、顔の表情まではっきりと見えているなんて!
しかも、そんなドローンの映像で町を監視し、操縦を行うパイロットは、
戦地から1万キロ以上も離れたラスベガスの基地にいるのだ。
「100%安全な」エアコンの効いたコンテナのなかにいて、
モニターの映像を見ながら、発見したターゲットを女子供もろともミサイルで
爆破していく。
撃たれるほうは、まさに青天の霹靂。
バラバラになって死ぬまで、見られていたことも、ロックオンされていることも
気がつかないのだから。

そうして、遠隔殺戮を行ったパイロットたちは、昼になると食堂でランチを食べ、
夕方には、家族の待つ家に帰ったり、ラスベガスの町で酒をあおったりする。
グアンタナモを皮肉るセリフがあったり、
「これは戦争犯罪では」「対テロ戦争など憎しみを生むだけでは?」などなどの
葛藤も描かれてはいるけど、
ドローンによる「実感のない殺戮」の薄気味悪さがあまりにも強くて、
そんな問題定義も掻き消されていくようだった。

挙句、劇中のドローンからの俯瞰映像を見ているうちに、
映画ごしの私のなかにまで、まるで自分が「正義」のために人を殺せる天の神
にでもなったかのような感覚が、ふと芽生えている瞬間があった。
あるシーンで、
「こんな奴ぶっ殺しちゃえ! ボタンひとつで済むし、絶対仕返しされないし」
と。その瞬間の自分が、一番怖かったかも。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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