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泉美木蘭
2015.3.24 06:16

除染作業員仮設宿舎にて

除染作業員が寝泊まりする仮設宿舎に関する取材で、
日曜から福島県双葉郡へ。

原発20km程度圏内で、放射線量が比較的低く、
高台で津波の被害を受けなかった広い土地は、
ほとんど国や東電や建設会社が借り上げており、
復興関係の事務所や
作業員用の仮設宿舎になっている。

仮設宿舎はプレハブ造りだったり、窓、ドア、ユニットバス
などをつけて、ワンルームに仕上げたコンテナだったりする。
こういった仮設宿舎ができる前は、近隣の宿の大広間で、
段ボールを置いてなんとかプライベートスペースを作って
雑魚寝するか、
現場から離れた場所に寝泊まりして、毎朝車で2時間ほど
かけて通うかしかなかったそうだから、
(もちろん現在もそれしか方法のない場所がたくさんある)、
『現場近くのワンルーム』と聞くと、それは待遇がいいなあ
という感覚になる。

土盛りした広場に、こういったワンルームのコンテナを
ずらりと置いて、『民宿』として看板を掲げている所も
たびたび目に入る。
コンテナのひとつを朝食用の食堂にして、バイキングで、
ご飯、味噌汁、ゆで卵、漬物、納豆、梅干しなどが出る。
普通の民宿と違うのは、これらの朝食が午前4時半から
用意されていることだ。

近隣には、住民が帰らず空家のまま放置されている民家が
目立つが、まばらながら、開店している飲食店もある。
特に夜はそういった店に作業員たちが集中するようで、
焼酎のボトルが棚にぎっしりと並び、建設会社らしき名札が
神社の絵馬のように重なり合ってぶら下がっていた。

田舎の飲食店は、どこもとにかく駐車場が広いのが特徴だが、
ある飲食店は、大きな駐車場を半分潰して、コンテナ民宿を作り、
『飲食+宿泊』として営業していた。
原発事故後は、客だった地元民が消えてしまったのだから、
苦肉の策でしかないが、作業員の気持ちになると、
こんな嬉しい宿泊所はないよなあと思う。


続々と建設されてゆく作業員宿舎だが、
土地や施工会社をめぐっては、利権争いが絶えないようだ。
私が取材した海沿いのとある宿舎建設予定地も、
利権を主張する人物がダンプカーで乗り込んできたり、
事業主のご家族が都内の自宅近くで暴行を受け入院したり、
とにかくすさまじい妨害工作があったと聞いた。
地鎮祭の取材で現場にいたときも、地元の施工会社が車で
乗り付けてやってきて、ごちゃごちゃと言っていた。

利権、利権、利権。 
うんざりしてくる。
泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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