ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2014.12.28 04:10

テーブルに操られて食べるきのこラーメン

バイト先の音楽バーが年内営業終了し、
怒涛のラッシュがひと段落。
連日深夜3時すぎまで超満員で、
きのうはボルテージのあがりすぎた女性が酔って
ひっくり返って、テーブルを倒してしまい、
グラスや皿を7,8枚粉々にしてしまった。
怪我がなくてよかった。

一昨日、満員のなか、なにかの拍子に、
テーブルの縁で太ももをこすってしまい、
たまたま突き出ていたささくれが刺さって、
太ももにめりこんで抜けなくなってしまった。
めっちゃ痛いけど、超絶忙しいし、
抜けないものはしょうがないので、

「くそー、今夜は太ももにテーブル刺したまま働いたる!」

と気合いを入れて、そのままひと晩乗り越えた。

仕事中は忙しすぎて気にならないのだが、
終わって気が抜けると痛いのなんの。
閉店して深夜営業のファミレスへ食事に行っても、
太もものささくれで頭がいっぱいで、
メニューを眺めても、なにも選べない。

「もくれん、きのこラーメンにしたら?」

私がなにも決めないので、
誰かがテキトーに推薦した。
私はきのこラーメンなんか食べたくないし、
いままできのこラーメンなんか選んだことない
どころか、眼中にも入れたことがない。
なのに、このときは、

「うん、きのこラーメンがいいな。それで」

と答えてしまった。
自分の意志や嗜好とは無関係に、
食べたくもないきのこラーメンを食べてしまう私。
ああ、自分はいま、太ももに埋め込まれたテーブルに
操られているのだと実感した。
空から舞い降りてきた強烈な光に包まれて、
宇宙人に連れ去られ、オレはチップ埋め込まれたんだ
と騒いでるアメリカ人も、こんな感じだろうか。

太ももに刺さったテーブルは、
翌朝、病院でメスで切開して取り出してもらった。
この年末、病院開いててよかった。

さーて、これから大掃除だ。
テーブルにはヤスリをかける。


泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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