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高森明勅
2018.3.28 22:00

安倍政権「放送」破壊の企て

安倍政権が「放送法」の改正を目論んでいる。

これをどう捉えるべきか。

既に様々な意見が出されている。

その一部を紹介しよう(読売新聞3月27日付)。

政府の規制改革会議は放送とインターネットなどの
通信の垣根をな
くすため、政治的公平性などを求める
放送法4条を撤廃しようとしている。

ネットの役割は近年高まっているが、
ネットの世界は何でもありだ。
日本では放送法で示された大きな方向性の下、番組の審議は
NHKと民放各社が設立した)放送倫理・番組向上機構(BPO)
で行う自律的な仕組みが動いている。
4条撤廃は、
こうした仕組みがなくなることを意味する。
…『
フェイク放送をやってもいい』などという
『放送のネット化』
を国民は望んでいない。
…欧州では『
ネットに放送の規制をかけるべきだ』という議論があり、
放送の規制を緩める政府案は逆行している。
外国資本の参入規制緩和が検討されていることも疑問だ。
中国や北朝鮮の資本が入ってくる可能性にもつながる」
慶応大学教授、中村伊知哉氏)

「規制改革推進会議の議論では…希少な電波は周波数オークションの
対象とすることも検討されてい
る。
周波数オークションは民放への威嚇
材料だと思われるが、
放送の政治的公平性を損なうだけではないか。
首相の真意は、
放送法4条の撤廃にあると推察される。
4条では政治的公平性を担保することが求められており、
これが撤廃されると、その時々の政権に有利な放送しか
行えなくなるかもしれない。
放送の影響力の大きさを勘案した上で制定されている趣旨を
考えれ
ば、安易に撤廃することは許されない。
放送改革にこだわる理由は、一部の民放による首相批判への
不満にあるだろう。
本音は民放全体を解体しようというものではないか」
放送評論家、西正氏)

「放送法4条などを撤廃し、放送局が自由に主張し、
競争すれば良質な番組が生まれるという考え方は疑問だ。
完全に自由にすると、より視聴者の目を引く過激な番組が増える
一方、
地味だが良質で公共性の高い番組が減り、番組の多様性は
むしろ失われてしまう可能性が高い。
一定の規制がある放送局の番組はインターネットと比べて
上品で面
白くない、と思う人はいるかもしれない。
ただ、
規制で政治的公平性などを保つことによって、
多くの人に中立的で、公益性の高い報道に触れてもらえる利点は
大きい。
言論の多様性を確保するには、規制のない自由なネットの空間と、
規律がしっかりした放送空間を併存させることが大事だ。
過激な方向に流れがちなネットの言論に歯止めをかけるためにも、
放送は一定の規制を残し、公益性や中立性を担保すべきだ」
上智大学教授、音好宏氏)

勿論、放送法4条などの規制が現在、どれだけ実効性を
持ち得ているかを疑問視する向きもあるかも知れ
ない。

だが、だからと言って、それを直ちに撤廃して良い、
というのは短絡だ。

もし「放送のネット化」が進めば、社会の分断が拡大し、
国民の統合は損なわれかねない。

それを最も警戒すべきだ。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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