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小林よしのり
2018.1.29 04:37日々の出来事

「BLOGOS」の男系原理主義者の奇妙な記事


「BLOGOS」に奇妙な記事が載っている。

「皇位継承に男女平等を持ち込むのは変でしょ」

題されたブログだが、あまりの無知と暴論に唖然と

してしまった。

 

男女による差別を認めないのなら、血統による差別も

認めてはいけないはずで、それだったら天皇制を廃止

するしかない。

血統による差別を認めるのなら、男女差別も認める

べきで、それなら天皇は男系男子に限るべきだ!

…というのがその主張だ。

 

皇位継承が血統による一種の「差別」であるとは

いえよう。

だからこそ左翼やリベラルの中にも、「天皇制廃止」を

主張する者はいる。

 

しかし、そもそも「男女差別」と皇位の「血統差別」

はセットでもなければ、不可分のものでもない。

「天皇の血統を継いでいれば、男女の別を問わない」

というのは矛盾でもなんでもなく、むしろ明治以前は

それが原則だったのである。

 

天皇を「男系男子」に限定したのは明治の皇室典範が

最初である。

それまでは『養老令』で女帝の子にも皇位継承資格を

認めていた。

そして実際に女系継承は、天智天皇と元正天皇の2

存在する。

この2例を「男系」と位置付けているのは、明治以降の

後付けの理屈である。

 

「天皇の血統を継いでいれば、男女の別を問わない」

これが皇位継承の原則であり、それは近代の人権感覚

でもなければ、「法の下の平等」の感覚でもない。

古代からの伝統的感覚である。

むしろこれを否定して「男系男子」にこだわる方が、

伝統から外れた「近代感覚」なのである。

 

それにしても、この筆者は、

「男女差別に反対するなら、血統差別も反対しなければ

ならない。だから天皇制廃止!」

と主張したいのか? それとも、

「血統差別があるのなら、男女差別もあっていい。

天皇制があるのなら、日本は男尊女卑でいい!」

と主張しているのか?

それを明らかにしていないのは、卑怯である。

 

日本の伝統を「原理主義的ルール」と捉えるのは、

マルクス主義的歴史観と同じで、歴史を知らない

愚か者である。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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