「思うとおりにはいかないのよ」
「はーーーー、思うとおりにはいかないの」
大学の講義の帰途、電車で私の隣に座った
デカいおじさんがブツブツ言っていた。
横目で見たところフツーの会社員。
50代も半ばだろうか。
「思うとおりにはいかない・・・はーーー」
な、なにに対してつぶやいているんだろう・・・。
会社でミスでもしたか?
ストレスでもあったか?
ゴゴゴゴゴ。
グググググ。
スマホの着信の振動かと思ったら、
デカおじさんの唸り声。
うわー、相当ストレスたまってるわ。
で、私はそのまま、最寄り駅で降りて、
スーパーに夕飯の買い出し。
今日は冬至だからね。
ちょっと季節感出して、ゆず湯にでも入ろうかね。
と思って、果物コーナー行ったらアータ、
ゆず1個(しかも小サイズ)300円!!!
しかも残りはたったの1個!
げげ。
ここでカゴに入れなきゃ、誰かが買っちゃう。
けど300円。
鶏肉250グラム買えちゃうよ?
出来合いのカップスープだって8袋入りが買えちゃうよ?
キャベツ250円が高いと思って買うのをやめた私に、
このゆずを買え、と!?
ないわ・・・
まったく客の足元を見る商売しやがって。
仕方なくゆずの香りの入浴剤を買った。
「こんなこともあるさ」と思っていたら、
テレビにゆず湯の映像が流れた。
どこぞの動物園か温泉か、
カピバラが溢れるほどのゆずを湯に浮かべて
のうのうと泳いでた!
ゴゴゴゴゴゴ。
ググググググ。
これは私の唸り声。
「思うとおりにはいかないのよ」
隣に座ったデカおじさんのつぶやきが
脳裏によみがえる。
まったくだよ、デカおじさん。