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高森明勅
2017.11.25 22:00

10連休の愚

ネット上で、天皇陛下が譲位される再来年は、
「10連休」
になるのでは、と取り沙汰されているとか。

4月27日・28日が土日。

29日が「昭和の日」で3連休。

5月3日(法記念日)、4日(みどりの日)、
5日(こどもの日)、6日(
振替休日)と4連休。

これで5月1日が祝日になると、祝日法の定めで、
祝日と祝日の間の平日は休日になるので(
第3条第3項)、
前日の4月30日と翌日の5月2日も休日になって、
10連休となるーと。

これを内閣府に取材したメディアがある。

その担当者の回答を見て呆れた。

「改元日が5月1日で、さらにその同じ日に皇太子さまの
『即位の礼』が行われれば、
10連休も、夢じゃないかもしれません」
内閣府大臣官房総務課の担当者)と。

ア然。

「即位の礼」当日は、恐らく前例通り、祝日になるはずだ。
それはその通り。
だが、
そのタイミングで「即位の礼」が行われる事は、
およそ想定し難い。

5月1日に改元を仮定しているなら
改元日そのものは祝日にはならない)、
その直前に、
今上陛下のご譲位と皇太子殿下のご即位が行われる、
と考えているはずだ。

その場合、皇位を継承されると、
国事行為として「剣璽(けんじ)等承継の儀」が、
先ず執り行われる(“等”とあるのは、
具体的には天皇の印章である
御璽〔ぎょじ〕
と日本国の印章である国璽〔こくじ〕)。

また同じ時刻に、皇室の行事として
「賢所(かしこどころ)の儀」も行われる。

これらによって、新しい天皇が恙(つつが)無く、
皇位の“
しるし”である「三種の神器(じんぎ)」を、
受け継がれた事が示される。

最初の皇位継承儀礼だ。

その後(平成の前例では2日後)、
「即位後朝見(ちょうけん)の儀」
がある。
これで、もう5月1日は過ぎてしまう。
大掛かりな皇位継承儀礼である「即位の礼」が挙行されるのは、
更にその先だ。

だから、これまでの皇位継承儀礼の骨格そのものを変更しない限り、
5月1日に「即位の礼」が行われる事は、決してあり得ない。

どうやら、そんな初歩的な事すら知らない官僚が、
「担当」
しているらしい。

危うい。

ひょっとして、政府が大嘗祭に差し支えが出かねない
5月1日のご即位にこだわっ
ているのは、この「10連休」を
狙っての事か。

万が一にもそうだとしたら、無知も甚だしい。

ばかりか、ポピュリズムの極み。

皇位継承という、
国家にとってこの上ない重大事を、
何と心得ているのか。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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