ゴー宣DOJO

BLOGブログ
高森明勅
2017.11.23 09:00

天皇ご譲位の翌日に皇嗣がご即位?

不思議な報道が続いている。

今上陛下が3月末日又は4月末日に譲位され、
その翌日の4月1日又は5月1日に皇太子殿下が即位される、と。

5月1日のご即位が大嘗祭との関連で
相応しくない事は既に指摘し
た。

だが、それ以前に、ご譲位とご即位が
「別の日」になるという報道自体が、奇妙だ。

これは当然、政府がそのような情報を流しているからだろう。

と言う事は、政府自身も、その奇妙さに
気付いていない可能性がある。

政府は、自ら国会に提出した
「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」
を読んでいないのか。

その第2条には、こうあるではないか。

天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、
皇嗣が、
直ちに即位する」と。

皇位の継承には“空白”が生じる余地がない。

天皇が「不在」の時間を設けてはならない。

だから「直ちに」。

これまでの典範の規定でも
天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」(第4条)とある。

当然「直ちに」だ。

この「直ちに」の意味は、法制局「皇室典範案に関する想定問答」
(昭和21年)
に以下のように明記してある。

「間髪を入れずの意である」と。

園部逸夫氏の『皇室法概論』にも次の通り。

皇位を一時たりとも空位にしないという趣旨であり、
即座にということを意味する」。

里見岸雄氏『天皇法の研究』の指摘は以下のようだ。

「(先帝崩御〔ほうぎょ〕に伴う皇位継承の場合は)
皇嗣が皇位を継承せられる時期は、天皇崩御の同瞬間であつて
それより前でもなければ後でもない。
天皇は1日、一瞬たりとも不在なるべからざる…
(故に)
天皇たらせたまふ自然人の交替は、論理上、
天皇崩御の同瞬間でなければならぬ」と。

これは、ご譲位について言えば、ご譲位の「同瞬間」に、
「間髪を入れず」
「即座に」ご即位されている事を意味する。

そうでなければ、天皇不在(!)の時間が生まれる。

そうした事態が万が一にも生じないように、
特例法にはきちんと「
直ちに」と規定しているのだ。

政府はそれをもう忘れたのか。

それとも、意味も分からずに条文を作ったのか。

たとえ深夜の午後12時にご譲位して戴くような
非礼、
非常識を敢えて行っても、
「一時たりとも空位にしない」
趣旨である以上、日を跨ぐ事にはならない。

こんな当たり前の事すら、政府は弁えていないのか。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

次回の開催予定

INFORMATIONお知らせ