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笹幸恵
2017.10.30 11:34

上から目線の被害者ヅラ

月刊Hanada12月号に、ジャーナリスト山口敬之氏の

独占手記が掲載されている。

「私を訴えた伊藤詩織さんへ」という記事だ。

 

詩織さんと会って酒を飲んでからのことを

あれこれ書いているのだけど、

一読して印象に残ったのは、「上から目線の被害者ヅラ」

だということ。

 

初めて会ったとき詩織さんがキャバクラ嬢だったとか、

メールで繰り返し要望を送り付けてきたとか、

そのメールにはやたら「!」が多いとか。

 この、あえて書いている感満載の妙な貶め方がいやらしい。

 

デートレイプドラックについては

完全に否定しているけれど、

だからと言って泥酔した女性をホテルに連れ込んで

いいことにはならない。

 

嘔吐し、朦朧とした泥酔者が「駅で降ろしてください」と

言ったからといって、本当に駅に放置すべきだと思いますか?

 

山口氏はこう書いているけれど、

「駅で降ろせ」と言っているなら、降ろしてあげたら

いかがでしたか。

「そんなの危ない。放っておくわけにはいかない。

だからホテルに行こう」って、男の相当な独りよがりです。

というか、この場合、彼女の帰宅先を運転手に告げて

タクシーで帰らせるのが一番スマートです。

吐きまくってタクシーにも迷惑をかけるというなら、

山口氏の宿泊先のホテルで一緒に降りるのもひとつの考えでしょう。

でも部屋ではなく、ロビーにあるトイレで存分に吐かせればいい。

なぜ自分の部屋にわざわざお連れするのでしょう。

 

女性を大事にしているっぽい感じを見せているけれど、

やましい下心が透けて見えます。

 

一方で、部屋にある自分の荷物に吐瀉物が飛び散って驚いたとか、

彼女がトイレで嘔吐する様子をわざわざ披露しています。
少しも大事にしてないね。

 

山口氏はこうも書いています。

 

飲み過ぎた詩織さんが、自分のしたことを忘れた、

という極めてシンプルな、よくある些事。

 

自分のTBSワシントン支局長という肩書を笠に着て、

ビザの相談で食事に誘い、朝になったら

パンツくれだの精子の活動が低調だのと言っておいて、

結局は支局長を解任されたので彼女を放置。

よくある些事?
山口氏にとっては些事でも、詩織さんにとっては
自分の人生がかかっている一大事だ。

自分がどれだけの権力を振りかざして

彼女を無言のうちに言いなりにさせていたか、

その自覚がないのだろうか。

自覚があって目を背けているのなら、

もっとたちが悪い。

 

そして「準強姦容疑」の逮捕状が出ても、

逮捕直前に警視庁からの電話一本でお流れに。

書類送検されたけど、処分が決定する前に

『総理』という安倍首相がでーーんと表紙に載った

本を出版している。そして不起訴処分。

詩織さんが検察審査会に不服申請をするも、

議決書は「慎重に審査した」という一文のみで

不起訴処分は相当との議決。

これ、よくある些事?

 

さらにこんなふうにも書いています。

 

あなたは五月の記者会見で、「共謀罪より

強姦罪改正を優先して審議してほしい」と

主張しました。私に大量の陰惨な誹謗中傷を

送り付ける方々の多くも、「テロ等準備罪」を

「共謀罪」と呼び、廃案を強く求めています。

これはまったくの偶然なのでしょうか?

 

何かの陰謀論とでも言いたいのか?

私は詩織さんとは何の関係もないけれど、

あのとき共謀罪より強姦罪改正を優先して

審議してほしいと思いました。

きわめて一般的かつ常識的な感覚だと思いますが。

 

彼女が背負う人生のリスクは、山口氏の比ではない。

たとえ彼女が山口氏の言うとおり、
勘違いをしていて、
思い込みが激しい性格で、

(百歩譲って)ある特定のストーリーを

作り上げていたとしても、
彼女の人生の生殺与奪の権を握っていた者が

自分のやったことを棚に上げて
「詩織さんは性暴力の被害者ではない」などと、
間違っても
言うべきではないし、
その立場になんかない。


笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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