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高森明勅
2017.6.4 00:00

番組観察

「夏に風邪をひくのは馬鹿」
という言葉を聞いたことがある。

幼少期に母親から言われたのだったか。

今、その夏風邪。

AbemaTV「みのもんたのよるバズ!」
の出演も断ろうかと思った。
しかし、出演して良かった。

番組を観察する機会を得たから。

一番、庶民的バランス感覚を発揮しておられたのは、
飄々とした司会のみのさん。
好感を持った。

女性司会者の下平さやかさんも、
番組の終盤にはかなり理解が深まっていた様子だった。

一方、私の隣に座った
首相補佐官のレベルの低さには些か驚いた。
自民党には他に人材がいなかったのか。
失礼ながら安倍首相の取り巻きは皆、こんな水準か。

補佐官でありながら、
旧宮家問題への政権の取り組みの実情もさっぱり知らないまま、
番組に出演する感覚が不思議だ。

また
皇位の簒奪を企てたような歴史は、
南北朝時代などを例外として無かった」

という趣旨の発言を平気でしていた。

室町幕府は南朝と対立するので、
北朝の天皇を立てだたけでなく、
上皇も立て、即位式、大嘗祭なども立派に挙行して、
辛うじて自らの正統性を支えていた。

皇位の簒奪なんて見当違いも甚だしい。

勿論、素人だから無知そのものを
非難するつもりは
ない。

ただ、自分が全く知らない事を、
知ったかぶりをして喋る慎みの無さが、みっともない。

しかし、そんなの一々訂正していたら
キリがないのが番組全体のレベル。

実証研究とは無縁な講談史観が
大手を振って罷り通っていた。

若い女性らが、どこかで断片的に手に入れた
胡散臭いネタを、
得々と並べ立てている様子は、
気の毒な印象さえ受けた。

その中で、山口真由さんは、学歴や経歴とは関係なく、
恐らく聡明な方なのではないか。

だから、自分がよく知らない分野の、
しかも重大な事柄について、
軽々しく判断するのを、
慎重に控えていたように見えた。

だから、発言も少なく、控え目だったのでは。

無知で無恥な者ほど無駄な多弁を弄しがち。

私も自戒しよう。

しかし番組の終わり頃に、
同番組の視聴者を対象としたアンケート結果が発表されて、
女性宮家」に賛成が20%もいたのは、意外だった。

5人に1人は自分の頭で考えようとしたという事実を示す。

思考停止組ばかりじゃなかったのは希望だ。

番組中は風邪とは関係なく、モチベーションが低く、
見逃せない訂正事項ぐらいしか発言しなかった。

それでも、司会の下平さんや真面目な視聴者を
何かしら触発するメッ
セージを発することが出来ていたら、
今回の出演も全く無駄では無かったか。

Twitterでも、少数ながら健全な反応はあったようだ。

但し身近から、この種の番組には(視聴者の範囲も含め)
わざわざ私が出る意味はないという厳しい忠告も届いている。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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