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小林よしのり
2017.5.8 19:05メディア

橋下羽鳥の番組はゲッペルスの作業だ


橋下羽鳥の番組を見たら、ものすごい編集の荒業が発揮

されていて、橋下のヤバい意見が全てカットされ、

それに突っ込むわしの意見もすべてカットされていた。

 

例えば、橋下は久間大臣の「原爆を落とされたのは仕方が

ない」という意見に同調し、「日本の政治家は原爆投下の

米国の罪を延々と言い募るつもりか?外交上、仕方がない

と思わなければならないのだ」と主張した。

 

それに対してわしは、原爆投下が虐殺だという感覚は、

今の米国人はまだ戦争体験者がいるから認められない

だろうが、次の若い世代になれば、原爆投下が人類の罪

だったと認めるようになるはずだと主張した。

少なくとも日本人の方から、原爆投下は止むを得ないと

考えてはならない。

それは国際法の進化に背を向けることになると、わしは

主張した。

以上、ごっそりカットされていた。

 

さらに橋下は「戦争を起こした国の政治家は今もずっと

反省しなければならない」と超自虐史観を述べた。

 

わしは驚いて、そんな馬鹿なことがあるかと反対した。

東条英機以下、東京裁判で裁かれて絞首刑になり、

アジアの各地で1600人以上(これはわしの間違い。
実際は1061人)の兵士が無茶な裁判で
処刑されて
いったのだ。

なんで今の政治家や、将来の政治家まで延々と反省し

続けなければならないのだと、わしは言った。

 

さらに戦争についての責任は、「戦争を起こした責任

なのか、戦時国際法違反を冒した罪なのか、敗戦した

責任なのか」という分類がある。

一概に戦争の責任を問うことなどできないということを

わしは説明した。これもカットされていた。

あの場にいた三浦瑠麗氏や他の政治家たちも聞いていた

はずだ。

 

そしてわしはあまりに橋下の言うことがデタラメなので、

「この人間が国政に復帰したら危ない」と本人の前で

述べた。

これには三浦瑠麗氏が「私もそれは小林さんの言う通り

だと思う」と援護していた。

 

わしは橋下羽鳥の番組に出ると、ヒヤヒヤする。

あまりに無茶苦茶な意見を橋下が言うからだ。

 

橋下の意見はやけに政治家寄りで、マスコミや評論家を

馬鹿にする。

さらに安倍政権寄りで、その政策を庇うようなことばかり

言う。

それを聞いているとムカムカしてくる。

橋下に会ったことがないときよりも、会ってからの方が

印象が悪くなった。

 

番組の前日にディレクターがわしの意見を電話で詳細に

聞いて、それをパソコンで文章化し、橋下に読ませて

いるのも変だと思う。

そのような事前検閲的なことを他の出演者にも行って

いるのか?わしだけか?

 

事前に知らされた情報では、橋下が「女は子供を産む機械」

という意見まで庇っていたことを知り、わしはそこは

徹底的に批判するからと伝えたのだが、収録当日には、

政治家の失言から外されていた。

わしと真っ向対立になるのを避けているようだ。

おそらく「自由貿易か、保護主義か」で一対一の対決

をやった時の敗北が尾を引いているのだろう。

 

やっぱり討論番組は「ナマ」でなければダメだ。

「編集」で印象操作してしまうのはダメだ。

田原総一朗の「朝まで生テレビ」がいかに際どいことを

やっていたのかが分かった。

「クロスファイア」も、収録した翌日に放送されたが、

ほとんど生放送同然だった。

 

発言者の印象が操作できない「ナマ」の危険さは、

司会の田原氏が望まぬアンケート結果が出たりもする。

「北朝鮮を武力攻撃すべし」が一番多くなったりして、

田原氏が「今の時代はこうなんだ」と嘆いていたが、

それが生放送のスリルなのだ。

 

橋下羽鳥の番組は、まるでヒトラーを神格化する

ゲッベルスの仕事のようだ。

あの編集の技が上手いということは褒めておく。

だが、橋下をヒトラーに育て上げる危険性に気づくべきだ。

このような番組に出ることは、わしの良心が疼くので、

もう出ない。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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