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高森明勅
2017.4.25 21:00

特例法最終骨子案

産経新聞(4月25日付)に
「譲位期日 皇室会議が関与  特例法案の最終骨子案
女性宮家創設 盛らず」との記事。

これを見ると、国会の合意では「結論を得るよう努力する」
という“弱い”
扱いになっていた皇室会議の関与が、
法案にかろうじて入りそうだ。

「(譲位の日にあたる)施行期日の政令を定めるに当たっては
内閣総理大臣はあらかじめ、
皇室会議の意見を聴かなければならない」
と。

それで自民党、公明党、民進党が大筋一致したという。

これで満点でないのは勿論だ。

しかし、当初の骨子案では全く外されていた。

それを押し戻して、
国会見解より踏み込む形で合意したのは、
評価できる。

こんなことを自民党や公明党が自発的にやる訳がない。

民進党の努力によるものだろう。

また初めの骨子案では、
ご心労」(2ヵ所)とあったのを、以下のように改めるらしい。
象徴としての公的な御活動…を天皇として自ら続けられることが
困難となることを“
深く案じておられる”」

「国民は…天皇陛下の“お気持ち”を理解し、これに共感している」
と。

当初案だと、後者は
国民は…ご心労…に共感している」となっていた。

“ご心労”に「感」って、明らかに可笑しな文章だ。

押し戻されるのを、予め織り込んでいた可能性もある。

しかし、この訂正によって、
譲位要件の「天皇のご意思に基づく」(ご意思に反しない)
の規範化が、より強まる。

もう1つの要件の、
皇嗣が既に成年に達していることは余りにも自明であり、
最初から入れられていた。

よって(産経の報道が正しければ)最終骨子案では、
私らが提案した譲位の3要件は、
曲がりなりにも
(皇室会議の関与は期日の決定のみだが)
事実上の規範となり得る所まで、
ギリギリ辿り着いたと見ることができる。

但し付帯決議では、国会の合意にあった
「女性宮家の創設」は、抜けたままだ。

皇室が存続できない制度の枠組みにいつまで固執するのか。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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